リニア中央新幹線の工事が難航し開業予定が次々に延期されているが、徐々に現実味を帯びてきたのは確かだ。開業時の終点になる名古屋では、次第にリニア効果が見え始めている。
2027年の品川名古屋間の開業が断念され、開業予定は公式に「2027年以降」となったが、名古屋を拠点にコミュニケーションデザイン事業を展開するトガルが実施した「名古屋駅東西南北地区のリニア中央新幹線に関するアンケート調査2025年版」によれば、昨年の調査結果と比較してリニア開業に期待する人の割合は46.7パーセントから54.6パーセントに大きく増加した。
リニア開業によって愛知県と名古屋市の魅力は向上するかとの質問でも、昨年は「向上する」、「大きく向上する」が合わせて56.2パーセントだったのに対して、今年は60.6パーセントと増加した。
それにともない、名古屋の街の発展を求める人の割合も昨年より増えている。具体的に思い描いているのは、国内外からの来訪者で賑わう街、安全で暮らしやすい街、若者や最先端の文化が集う街、歩きたくなる居心地のいい街などだ。
また名古屋駅周囲の再開発への期待も大きい。もっとも期待を集めたのが、電車やバスなどの公共交通機関や車のアクセスの向上だ。続いて駅前広場などの交流拠点の開発、ショッピングモールなどの大型施設の開発などとなっている。
リニア開業による名古屋駅周辺（東西南北の各地区）への影響をたずねると、もっとも多いのが東京圏へのアクセス向上だが、駅周辺の再開発、活性化への期待も各地区で同等に大きい。これは、リニアの工事や都市計画の具体化が進み始め、「住民が未来のまちの姿をより想像しやすくなったことが要因」だとトガルは分析している。
新幹線は単に鉄道会社に大きな収益をもたらす乗り物ではない。駅周辺に新しい文化圏を構築する巨大なインフラとしての役割も担う。開業によって駅周辺の人々は明るい未来を想像し、生活が活性化する。名古屋はこれから開業に向けて、ますます盛り上がっていくに違いない。それがリニア中央新幹線がもたらす「リニア効果」のリアルなのだろう。
