GX最前線、日本はどう進むべきか シンガポールと和歌山に学ぶ

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脱炭素と経済成長の両立を目指すGX(グリーントランスフォーメーション)が、世界中で新たな競争軸となりつつある。GXとは、再生可能エネルギーの活用や、CO2排出の抑制、循環型経済の実現を通じて、環境負荷を減らしながら産業構造を転換しようとする取り組みだ。従来のCSRや法令対応という枠を超え、国家の成長戦略の中心に据えられつつある。

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その背景には、カーボンニュートラルの潮流がある。欧州はグリーンディールを掲げ、米国はIRA(インフレ抑制法)を通じて今後10年間で数十兆円規模のグリーン投資を加速させている。こうした世界の動きに比べ、日本の取り組みは周回遅れとの指摘も少なくない。

一方で、地方自治体がGXを自らの地域戦略として捉え、独自のアプローチで推進する例も出てきている。国主導と地域主導の二層構造をどう組み合わせ、加速させていけるのか。鍵を握るのは、制度設計だけでなく現場における実装力だ。双方を兼ね備えた好例として、シンガポールと和歌山県のケースを紹介する。

国家戦略としてのGXと、その限界

日本政府は2020年、2050年カーボンニュートラルの実現を目指す方針を表明し、2021年には2兆円規模のグリーンイノベーション基金を創設した。重点14分野を対象に、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)を通じて脱炭素関連の研究開発や社会実装を後押しする。

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同時に、GXリーグと呼ばれる企業連携の枠組みも立ち上げ、600社を超える企業が排出削減の自主目標を掲げ、排出量取引のトライアルを進めているが、依然として大企業の参入にとどまり、中小企業や未上場企業、スタートアップの参画数は少ない状況である。

制度面でも、成長志向型カーボンプライシングや再生可能エネルギーの普及策、アンモニア・水素の利活用などが並行して展開されている。一定の方向性は見えてきたが、欧米と比較すると、政策のスピード感や資金投入規模に課題が残る。たとえば、スタートアップや中小企業に向けた資金供給や専門人材の確保は依然として限定的で、GX実現を担うプレイヤーが育ちにくい構造が続いている。

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文=富谷瑠美

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