和歌山県では、以前よりGXに取り組もうとする企業に対して専門家が計画立案段階から伴走、補助金申請の技術支援や設備導入に向けたアドバイス、GX指標の設計といった実務的な支援を提供。人材育成の面でも、和歌山県工業技術センターが中核となり、GX関連の実務講座(企業の若手社員を対象とした、カーボンマネジメント、Scope1〜3の排出量把握の重要性、再エネ導入の基礎知識といった実践的内容)を実施してきた。
しかし、県内の企業からのGXや脱炭素経営の相談の絶対量が増加せず、より積極的に地域全体での機運を高める必要性を感じていた。
そこで新たに始動した「G3 Drive」では、県が主体となって県内事業者向けのセミナーやワークショップなどを独自に提供。また日々の実践へ向けた課題解決を支援ネットワークの各種機関が担う形態を取り、啓蒙から実践までを総合的に支援する形で活動をアップデートしている。また今後は経営相談の枠を超えて、実装を見据えた資金調達や補助金活用までを後押しも強化していく予定としている。

このように、和歌山県では県庁がハブとなり、地域の金融・教育・企業支援のプレイヤーが一体となってGXを推進する「共創型エコシステム」の形成が進みつつある。制度の整備だけにとどまらず、地域の現場が「なぜ、何を、どう変えるのか」を主体的に考え、行動に移す。この仕組みと文化こそが、和歌山モデルの強みと言えるだろう。
和歌山県の取り組みは、「補助金を獲得して終わり」ではなく、計画策定から技術実装、そして地域間連携に至るまで一気通貫で支援を行う点に特徴がある。まさに、地域経済の変革とGXが結びついた実装主導型モデルであり、他地域にも示唆を与える先進事例といえる。
制度設計だけでなく「実装」がカギ
GXは、国家が目標を掲げるだけでは実現しない。重要なのは、どこで、誰が、どう動くかである。制度はあくまで手段であり、それを使いこなす現場の知恵と行動力がなければ、投資も技術も社会に根付かない。和歌山県のような現場主導の取り組みが生まれ、それが横展開されていくことで、日本のGXは初めて動き出すといえる。
今後求められるのは、「地域に任せる勇気」ではないだろうか。中央集権的な制度運用ではなく、自治体が裁量を持ち、地域の課題と資源に応じたGX戦略を描ける仕組みをどう築くか。成功事例を複製するのではなく、それぞれの地域が自らのモデルを描き、それを国が支援する。そうした構造転換が求められている。
GXを動かすのは、制度ではなく実装だ。地域からの創意と挑戦が、未来の産業地図を塗り替えていくだろう。


