GX最前線、日本はどう進むべきか シンガポールと和歌山に学ぶ

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グリーン分野でのスタートアップ投資額を見ると、2020年時点で米国の566億ドルに対し、日本は5億ドル。J-Startupなどの育成プログラムはあるが、技術開発から社会実装までの「死の谷」を越える資金の流れが細く、支援制度も煩雑で使いこなしにくいという声が現場からは上がる。

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一方、制度設計と成長の好循環を実現している国の一例がシンガポールだ。同国は「アジア太平洋GXハブ戦略」を掲げ、脱炭素分野を国家主導の成長ドライバーに位置づけている。その根幹には、透明性の高い法制度と、統合されたデジタルインフラがある。

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中小企業支援を担うシンガポールの政府機関Enterprise Singaporeは、GX分野に挑む企業向けにEFS-Green(グリーン金融支援制度)を整備し、すでに50社以上に対して総額2.6億ドルの支援を実行した。ZEBOX Asia Hubのようなスタートアップ支援拠点も設け、海運大手や官公庁が連携して、環境スタートアップと大企業との協業を促している。政府は炭素税の段階的引き上げも進めており、GX市場への企業参入を制度面から強力に後押ししている。

このように、資金調達、人材、技術導入、サプライチェーン再設計といった個別の施策が連動し、結果としてグリーン分野への民間投資が増えている。成長と制度が両輪で動く仕組みが構築されている点は、日本にとっても示唆に富んだケースだといえるだろう。

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地方から挑むGX、和歌山県の実装モデル

GXを「現場」で動かす力は、地方にもある。その象徴的な取り組みとして、2025年6月から本格始動したのが、「G3(ジーキューブ) Drive」と名付けられた和歌山県のGX起点の産業集積を目指したGX推進プロジェクトだ。

これは、環境省の「令和6年度 地域ぐるみでの脱炭素経営支援体制構築モデル事業」で組成された県内の金融機関(地銀や信金)、地域の経済団体(商工会議所や振興財団)、民間支援機関、教育機関(大学)から成る支援ネットワークと連携し、県内の中小企業のGXや脱炭素経営の価値化と実践を目的に展開されている。

次ページ > 制度設計だけでなく「実装」がカギ

文=富谷瑠美

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