「将来、何をしたいかわからない」「自分には特別な才能がない」──そんな悩みを抱える10代は多い。 変化の激しい時代を生き抜く若者に必要な「ソース原理」とは。令三社の山田裕嗣に聞いた。
──「ソース原理」とは何か。
山田裕嗣(以下、山田):「あなたが『創りたい』ものはなんですか?」。
ソース原理では、人の中に宿る何かを「創りたい」「表現したい」という意欲に目を向けます。その創造的な意欲を持つ人のことを「ソース」と呼びます。ここで語る「創造」とは、なにかの作品を創ること、表現することだけでなく、友だち同士で「今日はサッカーをしよう」という遊びを始めることなども含まれます。ソースには、大きく2つの役割があります。ひとつは「次の一歩を決める」こと。もうひとつは「何をやるか、やらないか」を決めることです。ここで大切なのは、ソースは最初から「正解」を知っているわけでもなく、完璧な計画を準備できるわけでもないことです。 ソースは「創りたい」という意欲を持ちつつ、常に迷いながら創造的な活動を続ける存在なのです。
──なぜソース原理が重要な理論なのか。
山田:これまでの「リーダー像」とは大きく違います。リーダーは最初からビジョンがクリアに見えて、みんなを引っ張っていく存在だと捉えられがちです。しかし、ソース原理は「迷い」を前提にします。自身の経験を振り返っても、新しいことを始めるときに「やりたい」という意欲や衝動は湧いても、最初から明確なゴールがすべて見えることは少ないと思います。ソース原理では、創造的な活動の持つ曖昧さや不透明さを前提にします。
またソース原理では、特別な才能の持ち主だけでなく、すべての人は何かの意欲を持ち、創造的な活動ができると捉えます。大きく捉えれば、人生そのものが壮大な「創造」のプロセスであり、自分のソースなのです。
「9割の時間は迷っている」
──その原理を、10代はどう応用できるのか。
山田:「ソースも迷うものだ」と捉えることは生かせるのではないでしょうか。たとえば「将来、何をしたいかわからない」「自分には特別な才能がない」という悩みは、ソース原理の視点からは自然なことにも見えます。ソースは「9割の時間は迷っている」と言われます。 自分の人生という壮大な創造的なプロセスにおいて、10代のときに「やりたいことがわからない」と迷うのは自然なことです。
そんなときには、最初からゴールを明らかにしようとせず、「何となくいつも調べてしまう」「気付いたらやっている」ような、自分の体が自然と動くような小さな衝動に目を向けると良いかもしれません。
最初から完璧な将来設計は必要ありません。そうした「小さな衝動」から始め、体験することを通じて、さらにその先の「一歩」が見えるかもしれません。その理由を最初から論理的に説明できなくても構いません。ソース原理で大切なのは「感覚」です。



