エネルギー消費は大部分が離陸時に集中しており、残り時間のほとんどはエネルギーを使わず、上昇気流に乗って飛んでいる。飛行経験が少ない若い個体でさえ、翼を動かさず何時間も山岳地帯を飛行することができ、アンデスコンドルがいかにエネルギー効率に優れた飛び方をしているかがわかる。
こうした効率性は、コンドルのような死肉食者にとって不可欠だ。というのも、体が大きいため、翼を1回羽ばたかせただけでもエネルギーを多く消費してしまうからだ。
エンジニアらは近年、アンデスコンドルを参考にして、より効率性に優れた風力発電用タービンブレードの設計に取り組んでいる(詳細はこちらの記事)。要点を挙げると、2024年に学術誌『Energy』で発表された研究によると、コンドルの翼の形状を模したタービンブレードをつくったところ、効率性が増し、発電量が推定で10%増加したという。
研究では、既存のタービンブレードの先端に、ウィングレット(翼端板)と呼ばれるカーブした形状を取り付けた。コンドルの翼の先端をかたどった形状にしたことで、空気力学的に優れたデザインとなり、空気抵抗が減り、揚力が増加したのだ。
アンデスコンドルは、アンデス地域の先住民にとって文化的に重要な意味を持つ。力や健康、自由の象徴として、同地域の神話や民話にもよく登場している。
しかし、保護という点では多くの困難を抱えている。生息地の喪失、農薬や鉛で汚染された死肉を食べることによる中毒、狩猟が原因で、一部の地域では個体数が減少中だ。そのため現在も、飼育下での繁殖や、生息地の保全といった取り組みが続いている。
アンデスコンドルは、ほかの大型鳥類と比較した場合、独特の生態的地位(ニッチ)を持つ。ダチョウは、体重こそアンデスコンドルを大きく上回るが、飛ぶことはできない。ノガンは、アンデスコンドルより体が大きいものもいるが、飛翔力ではアンデスコンドルに遠く及ばない。一方、アンデスコンドルは立派な体と、誰にもまねできない飛翔力を兼ね備えている。まさに猛禽類の王と言っていい存在なのだ。


