第二に、ウクライナに飛来しているドローンのすべてが「シャヘド(ロシア名・ゲラニ-2)」というわけではない。イランで設計され、現在は主にロシア西部アラブガ(エラブガ)にある巨大な工場で製造されているシャヘドは、「ゲルベラ」や「パロディヤ」、「イタルマス」といったひと回り小さいドローンと混ぜて使用されている。こうしたより小型、安価で、航続距離が短く、電子戦にも弱いドローンをウクライナ空軍はかつて「デコイ(おとり)」機とひとまとめにしていたが、実際には弾頭を搭載しているドローンもある。また、弾頭の代わりに木製のダミーを搭載したシャヘドも確認されており、ウクライナ側の防空システムに関する情報収集を目的に飛ばされているとみられている。
第三に、ウクライナ空軍は以前は電子戦で阻止したドローン数やデコイ機の損失を個別に報告していたが、現在はすべてを一括して報告するようになっている。そのため、損失の内訳がわかりにくくなった。
それでも、OSINTアナリストのCyrus(@Cyrusontherun)が指摘するように、7月中旬以降、迎撃率が急上昇しているのは歴然としている。そして、これは迎撃ドローンの配備と時期が一致している。
多層防空
大規模なドローン攻撃を防ぐには多層の防空体制が不可欠だ。個々のシャヘドの撃墜は難しくないが、あまりに数が多いと脅威になる。主に米国から供与されているパトリオット地対空ミサイルを使えばシャヘドを容易に撃墜できるが、米ロッキード・マーティンによるPAC-3弾の年産数は650発程度にとどまり、価格も1発数百万ドルする。ロシアは一晩でそれよりも多いシャヘド型ドローンを発射でき、これまでの最多では728機にのぼる。
ウクライナの防空体制は、ドローンの誘導を妨害する全土規模の電子戦システム、対空機関銃砲を装備した数百の機動防空チーム、ドイツ供与のゲパルト自走対空砲をはじめとする防空車両、ヘリコプターを含む航空機などで構成される。最近では、シャヘドは高高度を飛行するようになっているため、このうち地上ベースの防空部隊は以前よりも有効性が低下している。
ウクライナ空軍のF-16戦闘機などの航空機が、空対空ミサイルを満載して戦闘哨戒に出ている様子を示す画像が増えており、シャヘドを撃墜するところを捉えた映像もある。とはいえ、1発25万ドル(約3700万円)の米国製AIM-9Xサイドワインダーで1機5万ドル(約740万円)のシャヘドを撃墜するのも、やはり数的に防御側に不利だ。
Video captures a Ukrainian F-16AM Fighting Falcon taking out a Russian-operated Shahed-136 attack drone, originally designed in Iran, using an AIM-9 Sidewinder missile. pic.twitter.com/9z18l5VT2N
— Polymarket Intel (@PolymarketIntel) June 27, 2025


