ロシアのウクライナ侵攻に伴うエネルギー危機は、化石燃料の供給が途絶えた際のEUの脆弱(ぜいじゃく)性を浮き彫りにした。EU諸国は2021年、天然ガスの45%をロシアから輸入していた。この数字は、REPowerEU計画(訳注:2030年までにロシア産化石燃料への依存をなくすための欧州委員会の計画)による供給元の多様化を急いだことにより、2024年には19%にまで低下した。先月結ばれたEUと米国間の貿易協定には、こうした依存をさらに低減する意欲が示されており、原子力技術と核燃料の供給が明示された。欧州諸国が原子力を見直し始めた背景には、エネルギー安全保障が横たわっているのだ。
原子炉技術は大きく進化している。1979年の米スリーマイル島、1986年のソビエト連邦チェルノブイリ、そして2011年の福島第一という歴史上最悪の3件の原子力事故を引き起こした原子炉はすべて、1960~80年代に開発された第2世代に属する。1911年に製造された自動車にシートベルトやエアバッグが付いていなかったように、これら旧型の原子炉には、現在の第3世代以降の設計では標準となっている階層化された受動的安全装置が設置されていなかった。フランスの欧州加圧水型原子炉(EPR)や米国のAP1000をはじめとする最新の原子炉は、非常用炉心冷却系や格納容器の二重構造を採用し、メルトダウン時には人間の介入に頼ることなく自動停止するようになっている。将来の第4世代原子炉は、効率性と安全性、廃棄物の最小化をさらに追求している。第4世代の設計の中には、長期にわたる廃棄物の保管の負担を軽減する閉鎖型燃料サイクルを採用しているものもある。原子力は発電だけでなく、水素製造や工業加熱などにも利用することができる。言い換えれば、3大事故を起こした第2世代原子炉は、新型の原子炉とは根本的に異なるのだ。
中東欧に押し寄せる原子力推進の波
欧州の原子力の再編では、複数の異なる動きが見られる。フランスやスロバキアなど伝統的に原子力を推進している国々は、新たな原子力計画に取り組んでいる。フランスは一時、原子力発電の割合を縮小する計画を立てていたが、これは完全に撤回された。段階的な縮小とはまったく逆に、同国は2022年2月、新たに6基の大型原子炉を建設する構想を発表した。フランスでは2024年、電力の67.3%を原子力が占めた。
スロバキアでは5基の加圧水型原子炉が稼働しており、2024年の発電に占める原子力の割合は60.6%に上った。中心的な問題は、スロバキアの原子炉5基すべてがロシアによる設計で、同国の核燃料を使用していることだ。スロバキアの原子力事業者は、これらの原子炉用の核燃料の開発と供給について、米国のウエスチングハウスとフランスのフラマトムと契約を結んだ。
中東欧には、大規模な原子炉とSMRの両方を含む発電所の新規建設の波が押し寄せている。ポーランドはGVHの小型炉BWRX-300の建設を、計画中の大規模原子力発電所に併設すると発表した。ルーマニアは米国のニュースケール・パワーと協力し、同国の融資と技術提携を受けながら、中部ドイチェシュティに最初のSMRを配備する計画だ。ブルガリアも石炭の段階的な廃止に向け、同社のSMRを評価している。バルト三国もSMRの導入を検討している。エストニアの原子力企業フェルミ・エネルギアはBWRX-300の配備を目指しており、ラトビアは同国との協力を検討中だ。リトアニアは稼働を停止したイグナリナ原子力発電所で、仏ニュークレオが開発する鉛冷却高速炉の実現可能性を探っている。


