サイエンス

2025.08.06 17:00

「推定74歳」世界最高齢の野鳥、今もヒナを育てるコアホウドリが教えてくれること

2015年に撮影されたウィズダム(左)(WisdomReturns11.21.2015 Photo by Kiah Walker/USFWS)

2015年に撮影されたウィズダム(左)(WisdomReturns11.21.2015 Photo by Kiah Walker/USFWS)

ゾウガメやニシオンデンザメ、ホッキョククジラなど、長寿で知られる生物はいるが、鳥類はそういう動物ではない。しかし、その傾向に反する鳥たちもいる。

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ほとんどの動物は、体が大きいほど長生きする傾向にあり、一般的には鳥も、そうした傾向に当てはまる。世界最大の鳥であるダチョウは30~40歳まで生きることも珍しくない。アホウドリなど海鳥の仲間も長生きで、50年を超えて生きる例もある。オウム科やインコ科を含むオウム目の鳥も一般的に長命で、特に飼育下では寿命が長い。60歳を超える例も知られている。

一方、小型のフィンチやスズメの仲間は、5年も生きないことが多い。

この記事では、世界で最も長寿とされる野鳥、コアホウドリの「ウィズダム」についてご紹介しよう。

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少なくとも74歳のコアホウドリ

1956年、鳥類学者のチャンドラー・ロビンズは、北太平洋に浮かぶ米国領の離島ミッドウェー島で、1羽のコアホウドリのメスに、小さなアルミニウム製の足環を装着した。その時ロビンズは、この鳥がどれほど重要な存在になるか想像もしていなかった。

現在「ウィズダム(知恵)」の個体名で知られるその鳥は、少なくとも74歳になっていると推定される。記録されているなかで、最も長生きの野鳥だ。さらに驚くべきは、ウィズダムが今も卵を産み、ヒナを育てていることだ。

ウィズダムをはじめとするコアホウドリは、広げると最大7フィート(約2.1m)に達する翼で滑空する、大型の海鳥だ。コアホウドリは、生涯の大半を海で過ごし、繁殖と子育てのためだけに陸地に戻る。

ほとんどの個体は、5~8歳ごろまで繁殖を開始せず、つがいは通常、毎年決まった営巣地に戻ってくる。

ウィズダムが生息するミッドウェー島は、世界最大級の海洋保護区であるパパハナウモクアケア海洋ナショナル・モニュメントの一部だ。孤立したこの島は、捕食者が少なく、人間の影響をほとんど受けないため、海鳥たちにとって理想的な避難所となっている。

コアホウドリは、驚くほど長命の海鳥だ。長生きする要因の一つは、成鳥の年間死亡率が極めて低い点にある。1975年に学術誌『Pacific Science』に発表された研究では、ミッドウェー島で繁殖している成鳥のうち、年間94%以上が生き延びていると推定されている。すなわち、年間死亡率は20羽に1羽未満ということだ。この長期的な標識調査では、13%の個体が20年以上生存していたことが明らかになっている。

より近年の研究結果も、これらの数値を裏づけている。2011年に、ハワイのオアフ島カエナ・ポイントで実施され、学術誌『The Auk』に発表された標識再捕獲調査では、繁殖前の成鳥の生存率は99.6%に達し、繁殖に成功した個体の年間生存率は平均93.2%だった。

この研究では、コアホウドリが同じ場所に戻って繁殖する傾向が強く、また、つがいの絆が長く維持されることも指摘されており、これらの特性が、並外れた長命につながっていると考えられる。

現在70歳を超えているウィズダムは、なかでも例外的な個体かもしれない。しかし同時に、持久力に優れた海鳥が、生物学的にどれほどの可能性を発揮できるかを示す好例でもある。

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翻訳=高橋朋子/ガリレオ

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