ウィズダムが生き抜いてきた年月を真に理解するには、これまでの移動距離を知ることが役立つ。アホウドリは、1回の餌探しで数千マイルも飛行する。ウィズダムはこれまでの生涯で、300万マイル(約480万km)以上を飛行したと推定される。これは、地球と月を6回以上往復する距離に相当する。
その間に数十個の卵を産み、多くのヒナを育てるなかで、ウィズダムは、彼女に最初の足環をつけ、2017年に亡くなった生物学者ロビンズだけでなく、自分の子孫の多くよりも長生きしている。彼女の存在は、気候や捕食者、プラスチック汚染、商業漁業などの脅威にさらされている野生動物、特に鳥類の老化に関する通説に疑問を投げかけている。
さまざまな困難を乗り越え、ウィズダムは今も同じ場所に戻り続けている。しばしば新しい伴侶と一緒だ(アホウドリは長くつがいを維持するが、一方が死ぬと、パートナーを変えることがある)。驚くことに、(現在74歳くらいと推定される)ウィズダムは2025年2月、新たに孵化したヒナといる姿を撮影されている。
ウィズダムは、単なる特別な例ではない。鳥類の寿命、移動、生存率を調べる長期研究の生きたデータポイントだ。彼女の長命は、海鳥が長期にわたってどのように年齢を重ね、繁殖を繰り返すかを生物学者が理解する上で役立ち、その知見は保護活動に生かされている。
ウィズダムはまた、一種のセレブリティとなり、レジリエンス(回復力、困難を乗り越える力)の象徴として、子ども向けの書籍や保護キャンペーンに登場している。米魚類野生生物局がソーシャルメディアで紹介する彼女の姿も人気を集めている。


