ヘルスケア

2025.08.06 15:00

「臓器チップとAI」で動物実験を廃止へ 年間4400億円以上コスト削減の可能性

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それでも同社のCEOフランシスコ・ルポートは、フォーブスにこう語った。「すべてのバイオテクノロジー企業が直面する臨床上の核心的な課題は、動物は人間ではなく、オルガノイドも人間ではなく、細胞もそうではないということだ。本当に人間で試してみるまでは、人間に効くかどうかは分からないのだ」

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また、別のスタートアップは、より高機能なオルガノイドで、現状の課題を克服しようとしている。5月のシリーズAラウンドで4000万ドル(約59億円)を調達したサンフランシスコ拠点のVivodyneは、顕微鏡レベルの小型版よりも大型で、実際の臓器に近い機能を持つ、より複雑なオルガノイドを開発している。

CEOのアンドレイ・ジョルジェスクによると、同社の一部のオルガノイドは、血液を循環させることが可能で、科学者が開発初期段階の薬の効果をより正確に予測できるという。「ただし、現時点ではその関連性を容易に導き出せるだけの観測データがまだ十分にない。それが制約となっている」と彼は語った。

AIを活用する取り組み

科学者たちはまた、薬が体内でどのように作用するかをモデル化するための人工知能(AI)の活用にも目を向けている。AIは、FDA近代化法2.0や、FDAおよびNIHが発表したガイダンス文書のいずれにおいても、動物実験を置き換え可能なツールの候補に挙げられている。しかし、AIは人間の体を構成する基本要素の理解を加速させてはいるものの、科学者たちが、このツールを用いて薬が人間の患者に及ぼす影響を正確に把握できるようになるまでには、まだ遠い道のりがある。

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製薬企業Recursionで最高研究開発責任者を務めるナジャット・カーンは、「生物の根本的な仕組みについて私たちが理解しているのは、せいぜい10〜15%程度のものだ」と語る。独自の創薬向けAIモデルを開発する同社は現在、いくつかのがん治療薬を臨床試験段階に進めている。

マサチューセッツ州ケンブリッジに拠点を置く創業初期のバイオテクノロジー企業Parallel Bioは、これまでに3000万ドル(約44億3000万円)の資金を調達し、AIを使った人間の免疫システムのモデル化を行っている。同社は、幅広い属性の患者から作られたリンパ節オルガノイドを用いて、候補薬に対する免疫反応を試験している。

その後、この試験データをAIツールで解析し、治療法の安全性と有効性に関するデータをワクチン開発企業のCentivaxを含む製薬分野の顧客に提供している。Parallel BioのCEOロバート・ディファジオはフォーブスに対し、「当社の最終目標は、創薬のプロセスを動物モデルから、より関連性の高いモデルに移行させることだ」と語った。

彼は、テクノロジーが動物実験を完全に置き換えることはおそらく決してないだろうと認めつつも、その目標に向けての全体的な取り組みは、大きな力になっていると述べた。「これは今のところ、確実に超党派で合意が得られている数少ない事柄のひとつだ。薬がこれほど高価で、医薬品を作るのがこれほど難しい理由のひとつを、一般の人々は正しく理解していると思う」とディファジオは語った。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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