しかし、労働に対して非常に厳しい監督者であるフォックスコンは、中国本土の施設以外では、同レベルの品質、コスト、そして拡張性を達成するのに苦労した。その結果、フォックスコンは中国を拠点とする生産に依存することを決定した。フォックスコンが競合他社よりも優れた結果を出すにつれて、同社はアップルのビジネスにおけるシェアをますます拡大していった。
調達におけるアップルの戦略
アップルはWin-Winの調達や両者が互いの成功にコミットする関係性を重視するアウトソーシングを信じていない。著者は、iPhoneが世界で販売されるスマートフォンの20%未満しか占めていないにもかかわらず、業界利益の80%以上を獲得していると指摘する。「他のどの市場にも、これほどの支配力を持つマイノリティプレーヤーは存在しない」
「この数字が議論される際には、それはアップルのブランドアピールのおかげだと考えられてきた」。しかし、これは完全には正しくないと著者のマギーはいう。アップルはサプライヤーをわずかな報酬で働かせることができたのである。デザインにおけるリーダーであるアップルの最先端機能は、他の電子機器OEM(相手先ブランドによる生産)が模倣するとサプライヤーは考えるようになった。そして、彼らはアップルの競合他社との契約を獲得する有力候補となり、それらの契約ははるかに高い利益率をもたらすと考えたのだ。
台湾の委託製造業者であるフォックスコンが、最初にこの結論に達した。彼らはこのモデルに大きく賭けた。そしてこの賭けの結果、世界最大の委託製造業者へと成長した。
契約製造への異なるアプローチ
企業は価格、幅広い製品ラインナップ、サービス、あるいは市場をリードする機能など、さまざまな方法で製品を差別化できる。アップルは常にデザインの最先端に立つことで差別化してきた。これが、アップルにとって根本的に異なるサプライチェーンを生み出すことになった。
アップル製デバイスの競合他社は、年間に数十種類ものモデルを少量ずつ販売している。これらの企業が採用する追随型の戦略は、許容範囲の広い標準化された部品を使うことに基づいている。
「しかしアップルは異なっていた」とマギーは述べている。「アップルの製品ポートフォリオは徹底して簡素化されてた。2015年でもアップルは1年に2種類の新しいiPhoneしか発売しておらず、アップルは高級モデルを手づくりのように仕上げながら大量生産していた。サプライヤーを選ぶ際、アップルは価格ではなく品質を重視した。その品質を実現するために、アップルはデバイスを作るための新しい製造プロセスを考案する必要があった。しかしアップルが新しいデザインを選択するまでは、こうしたプロセスは存在していない。それ故にアップルは、サプライヤーとより密接に協力しなければならなかった」


