ヘルスケア

2025.08.06 18:00

ヘルスケア領域を支えて10年。HVC KYOTOが迎えた節目の現場をレポート

ヘルスケア領域に特化した日本最大級のプラットフォーム「HVC KYOTO」。10年の節目の年を迎えた2025年、夏の盛りの京都で行われた白熱のピッチプログラムの様子を追った。

advertisement

かねてより、京阪神エリアはヘルスケアやライフサイエンス発展の地だった。武田薬品工業や塩野義製薬などの大手製薬会社の創業の地は大阪であるし、2012年にノーベル医学・生理学賞を受賞した山中伸弥教授は、京都大学に拠点があった。神戸市には多くの外資系ヘルスケア関連企業が日本法人の本社を置き、研究開発の本拠地にしている。

HVC(Healthcare Venture Conference)KYOTOは2016年に誕生した、ヘルスケア領域のスタートアップ、および起業を志す研究者を対象としたイノベーションプラットフォームだ。独立行政法人日本貿易推進機構(JETRO)、京都府、京都市、京都リサーチパークが主催している。

ヘルスケア領域は「大幅に劣後」。状況打破に立ち上がる

超高齢化社会が進み、医療課題先進国とも言われる日本。山積みの課題の側ら、日本のヘルスケアスタートアップの企業数や資金調達額はグローバルレベルで「大幅に劣後している状況」(経済産業省)とされており、厚生労働省ら関係省庁と連携の上、国をあげての支援が進んでいる。

advertisement

そもそもヘルスケア領域は、アイデアの着想から開発、臨床試験など開発が長期化するケースが多く、また数十億単位の開発資金が求められる。また研究開発を進めたとしても、それらを育て、ビジネスへと架橋するには、また別種の知見が要求され、起業のハードルが高い。

こうした状況下で、医療産業にイノベーションをもたらすことを目的に2016年に立ち上がったのが、HVCだ。米国の医療系スタートアップの評価基準を日本のスタートアップ及び、ベンチャーキャピタル等の各種支援組織と共有するコミュニティ形成を目指したという。

スタンフォード大学医学研究員の経験があり、創薬・再生医療のスタートアップの事業開発支援の経験が豊富な、京都大学医学部附属病院 先端医療研究開発機構 ビジネスディベロップメント室長の小栁智義がリードアドバイザーを務める形で、毎年アカデミアの研究者、大手企業の事業開発担当者、VCやアクセラレーターがアドバイザーとして集結。ヘルスケア領域のスタートアップや創業予定の研究者を採択し、製薬企業や専門家らとつなぎ、メンタリングなどで支援してきた。

さらに、ここ数年は2日間に渡ってデモデイを開催しており、そこで事業提携先や共同研究先を発見できるよう、個別商談会や展示発表の機会を提供。そのデモデイの目玉は、全編英語のピッチプログラム。早期のグローバル展開や海外企業との連携を視野に、オールイングリッシュ形式を開始当初からのこだわりとしている。

これまでの9年の実績はというと、支援対象として採択したスタートアップは174件(創業前を含む)、採択後の資金調達額は765億円(2025年3月時点。公開情報、国内企業に限る)を記録した。過去採択のスタートアップは大手と事業連携、海外拠点開設など活躍を広げ、HVC自体も今年2月に内閣府の第7回日本オープンイノベーション大賞で「経済産業大臣賞」を受賞するなど、プラットフォームとしての存在感を高めてきた。

そして迎えた10年目。デモデイは2025年6月30日、7月1日の2日間、京都リサーチパークで催された。今年はスタートアップや研究者などから、創薬や再生医療領域の「Biotech部門」から10者、デジタルヘルスや医療機器に関する「Medtech部門」から12者、2部門の起業家や研究者計22者を採択した。

ピッチプログラムは最終日に行われ、採択22者中、最終選考に残った15者が登壇。今年は6月28日からの3日間、関西スタートアップ・アカデミア・コアリション(KSAC)主催の「BIE Workshop in Japan supported by SPARK Global」とも連携して、開発から起業までを実践的に学べるプログラムを提供した。こうして7月1日まで起業家や研究者らはエンジンを温めてきたのだった。

次ページ > ピッチよりも長い、アドバイザーとの手厚い対話

文= Forbes JAPAN 写真=京都リサーチパーク提供(撮影=逢坂憲吾写真事務所)

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事