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2025.07.28 10:00

自動運転で注目、「高精度位置情報」のSwift Navigationが累計370億円調達

AndreyPopov / Getty Images

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全球測位衛星システム(GNSS。Global Navigation Satellite System)は、人工衛星を利用して地上の現在位置を計測するシステムだ。米国のGPS、ヨーロッパのGalileo、日本のみちびき(QZSS)などが知られている。GNSSは、スマホ用地図アプリやドライブのための道案内や、おおまかな現在地を把握するためのツールとしては便利だ。

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しかし、走行中の自動車の車線維持支援や長時間ハンドルから手を離せる半自動運転、完全自動運転などのニーズを満たす先進運転支援システム(ADAS)向けの用途には、現時点のGNSSでは不十分で、さまざまな国や企業がセンチメートル級リアルタイムサービスの実証実験・商用化に挑んでいる。これらの動きは、まさに世界的潮流といえる。

自動車業界もより高い自律性を持つ車両の実現に向かう中、高精度の位置情報テクノロジーの必要性が一層高まっており、そのような技術を開発したスタートアップ企業が、投資家たちの注目と資金を集めている。

そのうちの1社が、サンフランシスコに拠点を置くSwift Navigation(スウィフト・ナビゲーション)だ。同社は7月23日、シリーズEラウンドで5000万ドル(約74億円。1ドル=147円換算)を調達したと発表した。これにより同社の累計調達額は2億5000万ドル(約367億円)を突破した。

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このラウンドはCrosslink Capitalが主導しており、既存投資家のNEA、Eclipse、EPIQ Capital Group、First Round Capital、Telus Global Ventures、Potentumが参加した。新規投資家としてはNiterra Ventures、AlTi Tiedemann Global、Grids Capital、Essentia Ventures、Shea Ventures、Ener Tech Capitalが加わった。

「当社は、グローバル展開を進めており、今後は数百万台規模の車両が我々のサービスに接続される予定だ」と、スウィフト・ナビゲーション共同創業者のティモシー・ハリスCEOはインタビューで述べている。「当社の技術はすでに数百万台の車両で使われているが、複数の自動車メーカーとのプログラムが進行中で、来年には新たなメーカーとの取り組みも予定している」。

Crosslink Capitalのマネージング・ディレクター兼創業者、マイケル・スタークは声明で「スウィフト・ナビゲーションは、高精度な位置情報のための画期的ソリューションを構築し、大規模な自動運転と自動化を可能にした」と述べている。

衛星の信号を補正して高精度を実現

GNSSの精度は、一般的なスマートフォンなどでは3メートルから10メートル程度だが、スウィフト・ナビゲーションのクラウドベースのアプリケーション「Skylark Precise Positioning Service(スカイラーク高精度測位サービス)」を使用すると、衛星の信号が大気圏を通過する際に生じる誤差を補正することで、「センチメートル単位の精度が実現できる」とハリスは説明する。

ここで誤差が生じる原因としては、衛星の軌道のわずかなずれや、GNSS信号が地上の受信機に届くまでの過程で生じる信号の乱れなどが挙げられるという。

「私たちは大気の状態をリアルタイムで解析しており、それが現在のコア製品になっている。Skylarkは一見、センチメートル単位の精度で測位が可能なデータサービスに見えるが、その背後では、大気や衛星の動きをリアルタイムでモデル化している。GNSSの上にソフトウェアのレイヤーを重ねたような仕組みだ」とハリスは説明した。

事実上すべての自動車メーカーがGNSSを利用中で、そのうち約70%が高精度GNSSを採用しているとされる。スウィフト・ナビゲーションは現在約20社の自動車メーカーと提携しているとハリスは述べている。

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編集=上田裕資

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