ライフスタイル

2025.08.02 14:15

デジタルノマドは次どこへ? 制度設計と未来の暮らし方へのヒント

ツァイトラーによれば、購入者は個人だけでなく、社員向けにアパートを購入した企業も含まれ、平均すると1人あたり2ユニットを購入しているという。購入者の動機は、投資目的だけというケースはなく、ノマド・コミュニティへの期待や参画といったところ大きい。

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各アパートはワンルーム型が基本で、シャワー、トイレ、簡易キッチン、バルコニー付き。2人以上での居住にはやや手狭な印象もある。一方で、共有スペースは広く設計されており、大型の共用キッチン、ワーキングスペース、ジム、プール、バーベキューやキャンプファイヤーが可能な広々とした中庭などが整備される。また敷地内には、スーパーマーケットなど日常生活に必要な商業施設の入居も計画されている。

デジタルノマドのためのユートピアを目指すというコリビング・セムコヴォは、今年の冬のスキーシーズンまでには改装を終え、正式にオープンする予定だという。一年後、このセムコヴォがどのように進化しているかに期待がかかる。

「ウルトラプレナー」の時代へ

BNFに参加して見えてきたのは、デジタルノマドというライフスタイルの多様性と、彼らが求めるコミュニティを支えるエコシステムの盛り上がりだ。事業を展開する側もまたノマドであり、その課題やニーズを自ら体感していることが、大きな強みとなっている。誰もがデジタルノマドになれるわけではないが、確実にノマドにとってフレンドリーな環境は整いつつある。

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2019年からデジタルノマドに関する調査報告書を毎年発行するMBOパートナーズの報告書(2024年版)によれば、米国におけるデジタルノマドの56%がいわゆるサラリーマンだが、その比率は減少傾向にあるという。また、企業に属する限りリモートワークの幅や選択肢が限られるなか、個人事業主や起業家のデジタルノマドの比率は今後さらに増えていくことが予測される。

加えて、AIの急速な進化もこの動きをさらに後押しするだろう。BNFに登壇した米国人研究者・起業家のダニエル・デュマ(Daniel Duma)は、ソロプレナー(一人起業家)がAIチームを駆使して事業を拡大し、大企業並みの成果を一人で生み出す「ウルトラプレナー」へと進化するというビジョンを提示した。

ウルトラプレナーのビジョンを説明するダニエル・デュマ
ウルトラプレナーのビジョンを説明するダニエル・デュマ

世界中を自由に移動しながら、たった一人でミリオネア、さらにはビリオネアを目指す──そんな話も現実になりつつあるのかもしれない。

自由とコミュニティを求め、旅を続けるデジタルノマド。世界全体で見れば、彼らは一握りの人々だ。しかし、彼らは理想の生き方を追求し続け、新しい経済価値を生み出しつつある。

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