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2025.07.26 08:00

ビル・ゲイツの「AIが医師に置き換わる」という予測は間違っている、現役医師が解説

Shutterstock.com

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ChatGPTのような人工知能(AI)ツールは、わずか数年ほどの間に一般に広く普及した。AIは現在、メールの作成や旅行の計画、株式市場の予測支援などを行っており、医療分野ではAIが複雑な医療の質問に答え、検査結果を分析し、医師の国家試験に合格することすら可能になっている。

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マイクロソフトは最近、複雑な病気の診断において医師の4倍の性能を持つと主張する新たなAIプログラムを発表した。では、AIは近いうちに医師に置き換わるようになるのだろうか?

ビル・ゲイツはそう考えているようだ。最近『ザ・トゥナイト・ショー』に出演した彼は、10年以内にAIが「ほとんどのこと」で医師を不要にする可能性があると語り、低コストのロボット主導の医療の時代が到来すると予測した。これは、ディズニー映画『ベイマックス』に登場するロボットを思い起こさせる発言だ。しかし、ゲイツは間違っている。

マイクロソフトなどが開発するプログラムが医療現場に導入される中で、AIが今後の医療を大きく変えていくのは確かだ。だが、医師が実際に行っている業務の大部分をAIが代替することは、少なくとも今すぐには起こらない。むしろ、AIは医師にとって最も優秀な「アシスタント」として、業務の効率を高め、より質の高い医療の提供を支援する存在になりつつある。

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AIが医師と同等か、それ以上にできること

AIが医師を代替できるという主張の根拠は、AIがすでに医療の中核的な業務を担い始めているという点にある。たしかに、AIはデジタル化されたデータの分析においては卓越している。

たとえば放射線科では、医師がX線、CT、MRIなどの画像を読むことに多くの時間を費やしているが、医学メディア、ランセット・デジタル・ヘルスの2019年のレビューでは、AIは画像分類タスクにおいて人間の放射線科医と同等かそれ以上の成績を上げたとされている。

皮膚科もAIに取って代わられるリスクが高い分野だ。皮膚疾患は写真に記録可能で、現在のAIモデルは皮膚がんの検出において、専門医と同等かそれ以上の精度を持つまでに進化している。

また、病理学でも同様だ。2024年のネイチャー誌のメタアナリシスによると、AIは臨床病理の診断で非常に高い正確さを示しており、感度(病気を見逃さずに見つける力)が96%、特異度(健康な人を誤って病気と判断しない力)が93%という結果が、48件の研究で確認されていた

情報が明確な「ビットとバイト」で与えられる場合、AIはすでに人間の医師よりも優れている可能性が高い。そして現在はそうでなくても、近い将来には確実にそうなると考えられる。

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編集=上田裕資

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