ジャスティン・サンは、ブロックチェーンプラットフォーム「Tron(トロン)」の創設者で、近年はトランプ米大統領との交流で知られる暗号資産ビリオネアだ。そのサンが、2800万ドル(約41億円。1ドル=146円換算)を支払い、ブルーオリジンの宇宙船に搭乗する新たな富豪になろうとしている。
ブルーオリジンの有人飛行において、6人の乗組員の1人として参加
現在34歳のサンは7月21日、ブルーオリジンのNS-34ミッションにおいて、6人の乗組員の1人として参加すると発表した。このミッションの他の搭乗者には、複数の実業家や気象学者、英国の慈善活動家などが含まれている。
🚀 Meet the New Shepard NS-34 crew: Arvi Bahal, Gökhan Erdem, Deborah Martorell, Lionel Pitchford, J.D. Russell, and H.E. Justin Sun. Read more: https://t.co/geIhqUDQ0R pic.twitter.com/T1bv4a3ukh
— Blue Origin (@blueorigin) July 21, 2025
サンは、今から4年前、ブルーオリジン初の有人宇宙飛行でも、同社創業者のジェフ・ベゾスなどと共に搭乗するために2800万ドルを支払ったが、当時はスケジュールの都合で辞退したとされていた。
NS-34ミッションは、ブルーオリジンの「ニュー・シェパード」プログラムの14回目の有人飛行にあたる。日程はまだ未定で「近日発表予定」とされ、サンがいつ宇宙に行くのかは定かではない。
「ブルーオリジンのNS-34ミッションに参加できて光栄だ。私はこのミッションを通じて、科学と宇宙で夢を追う若者を励まし続けたい」とサンは21日に語った。
今回のミッションでは、サンに加えて5人のメンバーが宇宙に向かう。サンのほか、不動産投資家アルビ・バハル、トルコの実業家ギョクハン・エルデム、ベンチャーキャピタリストのジェームズ・ラッセル、プエルトリコの気象学者でジャーナリストのデボラ・マルトレル、ネパールにある孤児院および非営利団体の創設者ライオネル・ピッチフォードが参加する。
暗号資産業界で最も賛否が分かれる、若手起業家
暗号資産業界で最も賛否が分かれる人物のひとりであるサンは、中国出身で現在はカリブ海の島国セントクリストファー・ネイビスの国籍を持つ。2017年に立ち上げたトロンのブロックチェーンを中心に事業を拡大し、暗号資産取引所のPoloniex(ポロエニックス)やP2Pファイル共有サービスのBitTorrent(ビットトレント)を買収したほか、取引所のHTXを支配している。
サンは2018年、違法な資金調達、マネーロンダリングなどの疑惑により、中国政府から中国国外への渡航禁止令下に置かれた。2019年、中国ではネズミ講(ポンジスキーム)として報じられ、トロンによって大きな損失を被ったという自殺者も出た。
2020年には元従業員から労働法違反とハラスメントで訴えられたが、この訴訟は仲裁に持ち込まれた。
2023年3月にサンは、トロンのトークン「TRX」をウォッシュトレードと呼ばれる市場操作で価格を釣り上げたとして、SECから詐欺容疑で起訴された。TRXおよびBitTorrentのBTTトークンを未登録証券として提供・販売したことや、著名人に報酬を渡して不正なプロモーションを行ったことでも告発された。しかし、今年初めにトランプ政権が暗号資産関連のほぼすべての訴訟や捜査を取り下げたことにより、彼に対する米証券取引委員会(SEC)の訴訟も棚上げされた。
国連薬物犯罪事務所(UNODC)は2024年、違法なオンラインカジノ経済および東南アジア地域において、トロンが「暗号資産マネーロンダリング業者が好んで選択する手段」となっていることを報告した。



