アンモナイト発見の経緯
アンモナイトは、太陽系外縁部の氷の世界を探索するため発足した探査プロジェクトFOSSILにより、ハワイにある日本のすばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラHSC(Hyper Suprime-Cam:ハイパー・シュプリーム・カム)を使った観測で2023年3月に発見された。有名な頭足類の化石の名前が愛称となったのも、プロジェクト名にちなんでいる。
同年5月と8月にもすばる望遠鏡で観測されたのち、2024年7月に同じくハワイにあるカナダ・フランス・ハワイ望遠鏡(CFHT)のMegaCam(メガカム)で追跡観測が行われ、より詳細な軌道が明らかになった。
加えて、南米チリのセロ・トロロ汎米天文台のビクター・M・ブランコ4m望遠鏡に搭載されたダークエネルギーカメラ(DECam)が2014年と2021年に捉えた画像と、米キットピーク国立天文台で2005年に撮影された画像にもアンモナイトの姿が確認され、19年前まで遡るアーカイブ画像に基づいて軌道の計算が行われた。

なぜアンモナイトは太陽系の「化石」と呼ばれるのか
アンモナイトが「太陽系の化石」と呼ばれているのは、少なくとも45億年前、すなわち太陽系の形成初期から安定した軌道を維持していることが、CfCAのスーパーコンピューターを用いた数値シミュレーションで示されたためだ。また、約42億年前にはアンモナイトを含むすべてのセドノイドの軌道がとてもよく似ていたことも明らかになった。
アンモナイトは、黎明期の太陽系における軌道の配置を今に伝える「化石」の1つなのだ。その存在は、太陽系の成り立ちを解明する上で大きな手掛かりとなる。
今回の発見の重要性
アンモナイトの発見は、単に太陽系に新たな外縁天体が1つ加わった、というだけにとどまらない意味を持つ。
論文の責任著者で、台湾・中央研究院天文及天文物理研究所(ASIAA)研究員の王祥宇(ワン・シャンユー)博士は、「アンモナイトの軌道からは、太陽系の外縁部を非常に早期に形成した何らかの要因が存在したことがわかる」と説明。「それは太陽系をかすめて通過した恒星かもしれないし、まだ発見されていない惑星かもしれない。いずれにしろ、今回の発見により真相へ近づくことができる」と語った。
吉田博士は、「探査機による観測は(中略)太陽系全体から見ればごく一部にすぎない。広大な太陽系のほとんどは未踏のままであり、すばる望遠鏡による広視野観測がその開拓を着実に進めている」と語っている。
2023 KQ14が正式にアンモナイトと命名されるかは、まだわからない。国際天文学連合(IAU)が後日、名称を決定する予定だ。


