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2025.07.23 08:45

銀行がつくる「地銀のコメ」はなぜ成功できたのか?

左から長谷川彰男/筑邦銀行コンサルティング本部エグゼクティブマネージャー、筑邦トゥルーバファーム取締役 宇都宮秀治/実家が農家。金融コンサルティンググループ、筑邦トゥルーバファームアグリ事業開発部長 永松寿夫/金融コンサルティンググループ主任調査役、筑邦トゥルーバファーム取締役

農地、人材、技術、DX、マーケティングなど あらゆる情報を集約するネットワークを構築

筑邦銀行のマネージャーと、筑邦トゥルーバファームの取締役を兼務する長谷川彰男は“農産業”についてこう語る。「農業といえば、作物を“作る”ことに注目しがちですが、土地や労働力の確保、土づくり、栽培、さらには加工、物流という出口までのあらゆるサプライチェーンやバリューチェーンまで俯瞰しながら、いかに支えていくかを考えて、初めて農業の農産業化“アグリビジネス”が成り立ちます。さらにこの農産業化を通じて生産者が、各々新たに法人化し、組織が整備されれば、銀行も貸し出ししやすくなります。ひいては地域経済の活性化にもつながっていきます」。

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筑邦銀行会長の佐藤は、農家が抱える経営課題に関してはコンサルティング会社、また人材に関しては人材派遣会社、他にも栽培技術やDX、マーケティングなど各方面から情報を共有できるような体制が必要になると考え、2025年に「ちくぎんアグリネットワーク」から「筑後アグリネットワーク」へ改名。その目的は、アグリネットワークをより充実させたものに拡大、発展させるために、筑邦銀行以外の他のエリアの地銀や信金、JAなどの金融機関とその先の顧客や農業生産者、さらに自治体、公的農業団体なども新たに参画できるような交流プラットフォームにするためだ。そこから新たなシナジーが生まれることも期待しているという。特にマーケティングに関して、農業生産者にとって一番の課題は販路の拡大だ。新たなネットワーク内でのマッチングにより、販路を作っていきたいと意欲を見せる。

数値に基づいたスマート農業へ 新たな共創事業が始まる

筑邦トゥルーバファームが立ち上がって2年。利益を出す体制が整ってきたこともあり、新たな事業にも目を向ける。筑邦銀行の主任調査役兼、筑邦トゥルーバファーム取締役の永松寿夫は将来の展望についてこう語る。

「長期スパンになりますが、NTTデータが60%、ENEOSシステムズが40%の出資で設立されたNTTデータCCSとタッグを組み、共に農業を盛り上げていこうと、スマート農業のシステム構築に力を入れています。

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具体的には、実証実験農場構想が持ち上がっています。農業は、経験に依る部分が多いため、土壌分析などデータを集めて数値化し、効率化、省人化による収益の向上を可能にするシステムをパッケージ化。横展開することで収益に結びつけたいと考えています。“アグリバレー”構想です」。

農家の跡取りで、銀行業務と農業実践の両立を図る宇都宮秀治
農家の跡取りで、銀行業務と農業実践の両立を図る宇都宮秀治

また、林は、農業都市にある地銀ならではの、事業承継問題を見越した新たな働き方についてもこう言及する。

「当行のアグリ事業開発部長の実家と義実家の双方が農業で、後継者は本人しかいない。それなら銀行を辞めずに農業をやってもらおうと、アグリチームに入ってもらったのです。彼は、業務の一環として、義実家で米・麦・大豆を作っています。我々はアグリネットワークに入っている農家を回るのですが、実際に農業をやっている人間がいることで、相手の懐に入りやすい。いろいろな悩みも直接聞けることはメリットも大きいと感じています。ゆくゆくは、事業開発部長が作った実家の米もRIGHTHOUSEへ卸すことも考えています。米に関しては、自主流通可能な銘柄米を入手できる体制も整いつつありますので、仕入れのコストダウンにも貢献できると思っています」。

最後に林が言う。

「今年1月、筑邦トゥルーバファームのグループ企業にあたる、トゥルーバファーム佐賀から、レモンの収穫の人員要請がありました。ちょうど月末で忙しい行員が多かったので、自ら出動しました。役員をはじめとする行員3人で400kg収穫してきましたよ。来週は田植えです」。
スーツを着た農業生産者が日本の農業を大きく変えていくかもしれない。

文=真下智子

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