資産運用

2025.07.25 08:30

「アンロック・ジャパン」の衝撃 これからの最良の資産運用術

イラストレーション=スプーキープーカ

イラストレーション=スプーキープーカ

2025年7月25日発売のForbes JAPAN9月号は、「次のバフェット・モデルを探せ」特集だ。一代で1,500億ドルの資産を積み上げたオマハの賢人ウォーレン・バフェット。「投資の神様」の引退表明というビッグニュースは、瞬く間に世界中に響きわたった。足元では、トランプ第二次政権の関税政策によって世界経済の不透明感が高まり、景気の先行きが読めない不安相場に。金融マーケットは大きな転換点を迎えた可能性がある。

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投資家たちはこの変化にどう向き合っていくべきか。本特集の冒頭では、Forbes JAPAN創刊初期から連載を通じて金融業界の未来を指し示してきたレオス・キャピタルワークスの藤野英人と根津アジア・キャピタル・リミテッドのデービッド・スノーディ、創刊編集長で本誌ファウンダーの高野真が、業界とマーケットのこれからについて語り合った。キーワードは、「アンロック・ジャパン」だ。


高野 真(以下、高野私は本誌ファウンダーの立場ですが、フォーブス ジャパンを立ち上げる前は27年にわたり株式のリサーチや資産運用業務に従事してきました。皆さんも1990年代からこの業界に携わっていますよね。まずこの30年間の業界の歩みをどうとらえているか教えてもらえますか。

藤野英人(以下、藤野日本の資産運用業界は劇的に良くなってきたと思います。運用会社の商品は多様化してきましたし、投資家の質も上がってきています。今、日本にはPER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)と聞いてすぐにピンとくる人が少なくとも2,000万人はいるでしょう。

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デービッド・スノーディ(以下、スノーディ私が日本でヘッジファンドの活動を始めたのは2000年ごろでしたが、当時、独立系の運用会社はほとんどありませんでした。日本の運用残高上位20社のうち独立系のシェアは今も2割に満たないという調査報告がありますが、もともとがゼロだったわけですから、2割はいい進歩です。これからは、運用スタイルのダイバーシティがより重要になってきますね。多様性が広がることは、業界全体としての成長につながると思います。

藤野:今、運用会社のスタートアップを増やしていこうという動きが出ていて、官民が連携して資金供給の円滑化を図るプログラムも実施されています。新興の運用業者が増えると、投資先の層も広がっていく。上場会社だけでなく、ベンチャー企業や企業再生案件なども応援されていけば、日本の産業強化につながります。投資家のお金も一方向だけに行かなくなって、一つひとつのファンド単位ではボラティリティがありつつも、業界全体で見ると平準化される良い流れができるはずです。

スノーディ:一方、個人投資家に目を向けてみると、専業もしくはセミプロのボラティリティ(変動率)に耐性がある投資家層と、NISA(少額投資非課税制度)を利用しているようなボラティリティに回避的な層のふたつがあって、ここに近年、金融に比較的詳しい新興富裕層が入ってきている印象です。

藤野:24年に新NISAが始まったタイミングで米国株に投資するインデックスファンドが非常に好調だったがゆえに、そこに日本の個人投資家の資金がかなり集中してしまったところがありますよね。この状況は、いずれ修正がかかっていくと見ています。

一方で、海外の年金基金などの機関投資家は、インデックスファンドだと市場平均のパフォーマンスで付加価値が出せませんから、基本的にアクティブファンドに投資しています。アクティブの大半は中長期的にインデックスに成績が劣るというデータもありますが、実はプロはうまく使っているのです。このことは、個人投資家の間で標準的な理解になったほうがよいですね。

ふじの・ひでと◎レオス・キャピタルワークス代表取締役社長。現・野村アセットマネジメント、JP モルガン・アセット・マネジメント、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントを経て、2003年レオス・キャピタルワークス創業。中小型・成長株の運用経験が長く、ファンドマネージャーとして豊富なキャリアをもつ。
ふじの・ひでと◎レオス・キャピタルワークス代表取締役社長。現・野村アセットマネジメント、JP モルガン・アセット・マネジメント、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントを経て、2003年レオス・キャピタルワークス創業。中小型・成長株の運用経験が長く、ファンドマネージャーとして豊富なキャリアをもつ。
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文=眞鍋 武 イラストレーション=ベルンド・シーフェルデッカー

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