資産運用

2025.07.25 08:30

「アンロック・ジャパン」の衝撃 これからの最良の資産運用術

イラストレーション=スプーキープーカ

高野:こうした流れのなかで、個人投資家はマーケットとどう向き合っていくのが良いと思いますか。僕自身は「負けない投資術」として、いくつかのポイントがあると考えています。例えば、株式は上がるものという基本的原理を信じること。そもそも、企業は売り上げを伸ばして利益を得るために活動していますから、利益が増え続ける限り、株価は上がっていくはずなんです。特に日本の場合、配当性向は2〜3割の会社が多いので、利益の余剰分は再投資に回っていきます。

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また、長期的な目線で、割安なタイミングで買うこと。株価を正規分布で見ると、指数が30%下がるような相場は確率論的にはあまり起きません。でも、実際はレフトテール(確率が小さく滅多に起こらない稀な現象)は確率以上に起こっている。この30年の間にも、1987年のブラックマンデー、89年のバブル崩壊、97年のアジア通貨危機、2001年のITバブル崩壊、08年のリーマン・ショック、11年の東日本大震災と5年に1度くらいの頻度で。つまり、資金を貯めておいて、レフトテール的なイベントを待っていればいい。このやり方は、個人投資家にしかできないんですよね。フルインベストメントを求められる運用会社がキャッシュを5年間も寝かすことはできませんから。

藤野:似ていますが、私は個人投資家の方には「7:3の法則」という話をよくしています。つまり、資産配分はエクイティ:キャッシュ=7:3を常に保っておいたほうが良いと。全資産を投資に回す必要はありませんが、原則として株価は上がっていくものだから、7割ぐらいの比率でもっておくといい。そして、3〜5年の間に一度は大きな動きがあるから、その下がったときにキャッシュを使おうと。株価が上がると今度はエクイティ比率が高くなるから、また3割をキャッシュにしておいて、次の動きに備えるわけです。

スノーディ:私はエクイティ投資に関しては、その銘柄が「もうかりそうだから」ではなくて、会社のストーリーや商品が好きだから買うという理由づけが大事だと思っています。本質的なキャッシュフローがなければ、いずれ株価が崩れてしまいますから。もうひとつは、受け取る利益を定めておくこと。株価の上昇なのか、配当なのか、優待なのか、それは投資家によって異なるけれど、妥当な価格だと思えるかが重要です。3つ目は、その株のボラティリティに耐えられるのか。例えば、毎月、株価が2割上下するようなボラティリティに心が耐えられないのなら、より安定した銘柄を買ったほうがいい。

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高野:個人の株式投資は余裕資金で行い、本当に安いと思ったときだけに投資をしたほうがいいと思います。仮に投資した後にもっと下がっても、余裕資金で投資していれば、もち続けることができる。時間が経てば価値は戻る、ないしは上がるかもしれない。いうなれば、時間を味方につける投資戦略です。心に余裕をもつ、投資が楽しいという状態にしておくことが、いちばん重要なことかもしれませんね。

たかの・まこと◎リンクタイズホールディングス取締役会長兼Forbes JAPAN Founder。1987年大和証券入社、97年にゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントへ移り、執行役員企画調査室長を経て2001年にピムコジャパンリミテッド入社。取締役社長を約13年務める。資本市場全般に関する論文・著書多数。1992年度証券アナリストジャーナル賞受賞。
たかの・まこと◎リンクタイズホールディングス取締役会長兼Forbes JAPAN Founder。1987年大和証券入社、97年にゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントへ移り、執行役員企画調査室長を経て2001年にピムコジャパンリミテッド入社。取締役社長を約13年務める。資本市場全般に関する論文・著書多数。1992年度証券アナリストジャーナル賞受賞。

文=眞鍋 武 イラストレーション=ベルンド・シーフェルデッカー

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