同時に、日本としてもアンロックしていかなければいけない社会構造になってきました。高齢化が進み生産年齢人口が減少して、移民政策も本気で考えなければいけない状況に。それに、今まで日本は長期的には円高基調でした。24年末にドイツに抜かれるまで、33年間連続で対外純資産が世界1位でしたから、世界が不況になると、いちばんお金のある国に資金が集まるのは、ある意味で自然なこと。しかし、ここ数年で急に円安になってきた。これには、日本の実体経済がストック頼りではもはや耐えられなくなっているという事情が反映されています。こうした大きな変化の時代のど真ん中に我々はいるのではないでしょうか。
藤野:日本の神話に、洞窟のなかにある巨大な岩戸を引き開けたら、光があふれてきて、闇に包まれた世界に平和が訪れたという天照大神の話がありますよね。アンロック・ジャパンの時代は、そんな世界観が広がっていくと期待したいです。
トランプ相場との向き合い方は
高野:足元の関心事として、トランプ相場とはどう向きあっていくのが良いと考えますか。相互関税の発表後、4月7日の日経平均は過去3番目の下落幅を記録しました。24年8月にも歴代2番目の下落幅の暴落がありましたが、その時は日銀の利上げと米国の景気減速懸念に伴う円キャリー取引の巻き戻しの影響が大きかった。一方、今回はトランプ政権の政策で、企業の将来利益が不透明になったことが主要因です。
藤野:今の状況下でいくつか確定的な要素としていえるのは、米国が自分たちの覇権を手放すということ。だから今、世界株でかなりの投資家がしがみついてるテーマが防衛ですよね。結果的に各国で防衛費が上がっていく未来しか見えない状況ですから。
この6月にヨーロッパに出張したのですが、これまで米国株に集中していた資金が流入して株価指数が上がってきて、チャンス到来の雰囲気になっていました。特に面白かったのは、訪問した運用会社がESG投資で「いちばん買っているのは防衛株」と話していたこと。ESGと防衛がどう結びつくのかを質問したら、「防衛株はピースなんだ」と。ミサイルや戦車への投資も平和のためだからやむなし、というわけです。善し悪しはわかりませんが、トランプ政権下で出てきた材料にはチャンスもあるし、リスクもある。新しい時代にどう対応していくかを考えていかなければいけません。
スノーディ:「マエストロ」の愛称で知られる元FRB(米連邦準備制度理事会)議長のアラン・グリーンスパンが在任中、最も嫌がったのが市場の不確実性だったんですよね。彼は不確実性をどれだけ抑えられるかがFRBの役割だとずっと強調していた。トランプの姿勢はその真逆です。だから、これからも市場の不確実性は高いままでしょう。トランプ自身は株式相場に対してかなり敏感だとは思いますが、投資家として米国にフルインベストメントはしにくい。複数の資産クラスを組み合わせた運用が中心になっていくと思います。


