欧州

2025.07.18 09:00

ウクライナが迎撃ドローン数万機調達へ キーウでは防空ドーム「クリアスカイ」稼働か

ウクライナのドローンメーカー、ワイルドホーネッツの迎撃ドローン「スティング」がシャヘド自爆ドローンを撃墜する様子(Xに投稿された動画より)

ウクライナのドローンメーカー、ワイルドホーネッツの迎撃ドローン「スティング」がシャヘド自爆ドローンを撃墜する様子(Xに投稿された動画より)

ウクライナ国防省国防調達局のアルセン・ジュマディロウ局長は14日に公開されたインタビューで、迎撃用のドローン(無人機)を「数万機」調達する契約を締結済みだと明らかにした。

米国がこのほど決めたウクライナへのパトリオット地対空ミサイルシステムの追加供与は、ウクライナがロシアのミサイルから自国を防衛するうえできわめて重要だ。しかし大量に押し寄せるドローンを阻むには、パトリオットミサイルよりもはるかに多数の迎撃ドローンが必要になる。

数の戦い

イランで設計され、現在はロシアでも生産されているシャヘド(ロシア名・ゲラニ-2)自爆ドローンの強みは、その圧倒的な数量にある。低コストのこのドローンは、第一次世界大戦時代の航空機並みの時速190kmかそこらで飛行し、それと同じくらいに撃墜しやすい。問題は数の多さだ。ロシアは6月、シャヘド型ドローン(一回り小さい「ゲルベラ」やデコイ(おとり)機の「パロディヤ」も含む)を5000機以上投入した。飛来数は最多で一晩に728機にのぼった。

これはパトリオットのようなシステムにとって多すぎる。米国のパトリオットミサイル生産能力は年間650発程度にすぎない。しかもパトリオットは1発330万ドル(約4億9000万円)程度と高価で、シャヘド1機(推定3万5000ドルほど)のざっと100倍もする。

言うまでもなく、ロシアの弾道ミサイルや巡航ミサイルへの対処ではパトリオットが引き続き不可欠だ。ミサイルもドローンに加え大きな脅威であり、6月には181発発射されている。しかしシャヘドに対しては、ロシアの生産ペースに匹敵する速さで量産できる対抗手段が必要だ。

ウクライナはこれまでシャヘドへの対処では、対空機関銃砲やサーマルイメージング(熱画像)カメラ、タブレット端末を装備する機動防空部隊に頼ってきた。これらの部隊は、低速で飛行するシャヘドを追跡する全土規模の指揮統制・センサーシステムと連携している。だが、ここへきてシャヘドは戦術を切り替え、高度3000mかそれ以上という対空火器の届かない高度を飛んできて、目標付近の上空まで到達してから急降下するようになっている。迎撃率は以前には95%以上あったが、6月には86%まで低下している。言い換えれば、突破率がおよそ3倍に上がった。

機関銃砲では、高い高度を飛ぶシャヘドに届かない。だが、小型の高速な迎撃ドローンなら届く。

次ページ > 秘密のベールを脱ぐウクライナの迎撃ドローン

翻訳・編集=江戸伸禎

タグ:

連載

Updates:ウクライナ情勢

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事