北米

2025.07.18 08:00

レアアースは新たな石油、米鉱山事業者ラマコが掲げる「脱中国依存」

ワイオミング州パウダーリバー盆地(Shutterstock.com)

ワイオミング州パウダーリバー盆地(Shutterstock.com)

米国のラマコ・リソーシズは先月、ワイオミング州シェリダンで50年ぶりに開かれるブルック鉱山における石炭の採掘を開始し、先週までに地中30メートルまでを掘削し、幅6メートルの石炭層を露出させた。この炭鉱の除幕式には、エネルギー長官のクリス・ライトやウェストバージニア州選出のジョー・マンチン元上院議員らが参加したが、彼らの関心を引いたのは、発電用の古典的な石炭ではなかった。ブルック鉱山に彼らが足を運んだのは、石炭に含まれる希少なレアアース資源に注目しているからだ。

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ラマコの会長でCEOのランドール・アトキンスは、今後12カ月間で採掘を予定している250万トンの石炭の中に、世界で最も需要の高いレアアースやその他の重要鉱物が含まれていることを期待している。その鉱物とは具体的には、ジスプロシウムやネオジム、スカンジウム、ガリウムなどの物質で、これらは強力な磁石や半導体、暗視ゴーグル、極超音速ミサイルなどの製造に欠かせないものだ。

「重要な鉱物とレアアースは、21世紀における石油のような存在だ」と語る弁護士でもある69歳のアトキンスは、プライベート・エクイティや投資銀行に加えて不動産開発などにも携わってきた経歴を持つ。

上場企業であるラマコの株価は、年初来で80%上昇し、時価総額は10億ドル(約1480億円)に達している。同社は、2026年末にも完成予定のパイロット処理プラントが稼働すれば、現在そのほぼすべてを中国から輸入している米国の年間約1万トンのレアアース需要の10%以上を、自社で賄えると見込んでいる。

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トランプ政権もレアアース生産を後押し

トランプ政権は、レアアースの国内生産を強力に後押ししており、国防総省は先日、ラマコの競合のMPマテリアルズへの4億ドル(約591億3000万円)の投資を発表した。同社は現在、米国で唯一稼働中のレアアース鉱山をカリフォルニア州マウンテンパスで運営しているが、この連邦資金の一部は、同社が最近テキサス州に建設した工場の10倍の規模となる新たな磁石工場の建設に充てられる予定だ。MPの株価は、このニュースを受けて45%急騰し、時価総額は73億ドル(約1兆800億円)に達した。

しかしアトキンスは、ラマコのブルック鉱山の鉱床はMPのものよりもはるかに優れていると主張している。MPのマウンテンパスの鉱山では、主に「軽希土類」(特に水処理に使われるセリウム)が採取されているが、ラマコは、より価値の高い「重希土類」の唯一の国内供給元になれるとアトキンスは述べている。これに対しMPは、マウンテンパスで得られる鉱石のうち「重希土類」はわずか2%だが、それでも年間数百トンの重希土類酸化物を生産していると反論している。

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編集=上田裕資

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