「究極の複合素材」としての石炭
ラマコがワイオミング州の鉱区の資産の調査を始めたところ、通常の火力発電用の石炭とは異なる特徴を示す物質があることに気づいたという。それをきっかけに、かつて父親の会社が連邦研究所と行っていた石炭からの液体燃料製造の研究を思い出し、連邦機関との連携を再開した。同社はまた、オークリッジ国立研究所や国立エネルギー技術研究所と協力し、石炭から合成黒鉛やカーボンファイバー、電池用アノードといった高付加価値製品を製造する取り組みも進めている。
さらに、マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者たちとは、石炭スラリーに含まれるレアアースをタンパク質に吸着させるための最先端の研究にも取り組んでいる。
「石炭は究極の複合素材だ。まるで万華鏡のように多様な成分を含んでいて、燃やすにはもったいない」と語るアトキンスは、「カーボン鉱石(carbon ore)」という新しい呼び名を広めようとしている。
一方、政府からの支援が必要なMPと違って、ラマコのレアアース関連事業は「黒字の製鉄用石炭企業に付け加える形の事業」に過ぎないため、連邦政府からの援助は必要ないとアトキンスは述べている(同社の利益はウェストバージニア州とバージニア州の鉱山から生まれている)。さらに、7月4日にトランプ大統領が署名した大型の税制・予算法案には、製鉄用石炭生産者に対して売上高の2.5%を税額控除する優遇措置も盛り込まれた。
ただし最大の疑問は、採掘・精製後のレアアースをいくらで売れるかということだ。レアアースの市場は、中国が世界の生産と精錬をほぼ独占しているため、自由な市場が形成されていないという問題点があり、それが国防総省がMPへの支援を決定した理由の一つでもある。そんな中、アトキンスは政府の支援に感謝しつつも、ラマコが自力で事業を拡張できると強調する。
アトキンスは、連邦政府からの直接的な出資は求めていないと強調する一方で、価格面での支援には期待を寄せている。彼はこれらの特殊な鉱物に対する米国内の基準価格インデックスを確立しようとしており、ワシントンの友人たちに対して、戦略石油備蓄(SPR)制度のように需要を下支えする仕組みの導入を働きかけている。「米国には、レアアースと重要鉱物の国家の戦略備蓄が必要だ」と彼は語った。


