ワイオミング州パウダーリバー盆地の地層には米国最大級の石炭鉱山が集中し、年間1億トン規模で石炭を採掘可能な鉱山も存在する。しかし、数年前まではこの土地にレアアースが存在することは知られていなかった。
「これらの資源が、『レア』と呼ばれるのは、量が少ないからではなく、採掘の採算が取れる形で見つかることが稀だからだ」とアトキンスは説明する。ブルック鉱山では、地球上の石炭層では類を見ないレベルの極めて高濃度のレアアースが確認されているという。アトキンスは、鉱物を多く含んだマグマを地表に押し上げた太古の火山活動が、この地の鉱床を形成したと考えている。
ラマコは年間約250万トンの掘削を計画しているが、そこから従来型の石炭を取り除く作業を経てアクセスできるレアアースの含有量が高い石炭層の規模は、年間50万トン程度だという。「我々は、最終的には外科手術のようにピンポイントで採掘を行う計画だ。巨大な露天掘り鉱山にはしないつもりだ」とアトキンスは述べている。
父親から受け継いだ「事業の芽」
アトキンスの父親のオリン・アトキンスは、1960〜70年代に化石燃料大手のアシュランド・オイルを率いる中で、後のアーチ・コールとなる事業を立ち上げた。だが、若きアトキンスは父親の業界に入るつもりはまったくなく、ロースクール卒業後はニューヨークやフロリダで不動産開発を手がけ、続いてビリオネアのローダー家とともに東欧でエネルギー資産の民営化を進めるジョイントベンチャーを運営した。しかし、2008年の金融危機後にプライベート・エクイティの世界で活動していたアトキンスは、打ち捨てられていた石炭資産に目をつけた。
「だからと言って、老朽化して閉鎖された鉱山や、大きな負債を抱えたものへの投資は避けたかった」と話す彼が注目したのは、未開発の新たな鉱脈だった。アトキンスは特に、アパラチア地域に眠る高価値な製鉄用やコークス用の原料炭に焦点を当てた。
ラマコは2016年に最初の鉱山を開き、2017年には新規株式公開(IPO)を行った。当時は製鉄用原料炭の輸出価格が1トン90ドルから160ドルへと急騰しており、その追い風もあった(現在はおよそ1トン135ドルで取引されている)。
同社がワイオミングの資産を取得したのは今から約13年前のことで、その当時は、ただ新しい鉱山の許可を取ってその後は手放すつもりだった。しかし、石炭が脱炭素運動の敵とみなされる中で、アトキンスは「新たな火力発電用の石炭鉱山なんてもう無理だと気づいた」という。そして彼は、「この石炭で、他に何ができるのか」を考えはじめたのだった。


