「幸せの共有が怖い」「トレンドを知らないのが怖い」現代の「恐怖心」とは?│恐怖心展

(左から)大森時生、梨、雪下まゆ

日本の現代社会における、さまざまなフォビア

━━展示の案内文では、恐怖症の代表例として「先端」「閉所」「視線」などを挙げていますが、現代ならではの“新しい恐怖心”もあるのでしょうか?

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大森:今回の展示でも取り上げているのですが、「FOMO(Fear of Missing Out)」ですかね。「取り残されることへの恐れ」などと訳されたりするんですけど、たとえばXで、自分が知らない単語がバズっていたりするときの怖さってあると思うんです。それって現代人ならではだな、と。

:「chero-phobia(チェロフォビア)」という、“幸福になることへの恐怖”ですかね。これは、「幸せになるのが怖い」という感覚に加えて、「幸せであることを表明するのが怖い」っていう気持ちも含まれているんです。例えば、SNSで「美味しいもの食べた」とか「結婚しました」とか、自分が“心地いい状態”でいることを発信するのが怖い、という感覚です。

大森:たしかに、他人の幸せを目にする機会って、昔よりも圧倒的に増えたと思います。芸能人がいい車に乗ってるとか、友人が素敵な旅行をしてるとか。それを見たときに、どこかモヤッとする気持ちがあると思うんです。で、そのモヤモヤが反転して、自分が幸せを発信する側になると、今度は「自分がそれをやったら、誰かがモヤモヤするんじゃないか」って怯えるようになってしまう。

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本来だったら、目にするはずのなかった“他人の幸せ”や“自分との差”を簡単に見れてしまう今だからこそ、その情報に触れたこと自体が恐怖心に繋がっていく。そういう気持ちの反転が起きやすくなっているのが、すごく現代っぽいなと思いますね。

━━皆さんの恐怖心、ありますか?

雪下:私は「still water」ですかね。 “動かない水”が溜まっている状態のことなんですけど、その静けさや不気味さが、すごく怖い。

大森:打ち合わせで雪下さんがあまりにも詳しくて、盛り上がりましたね!

僕は、特にこれといった恐怖心はないんですけど……。最近は、結婚したり歳を重ねたことで新しい恐怖心が出てきたかもしれません。たとえば「家庭内で何かが起きたらどうしよう」とか、そういう予期不安みたいなものがふと湧いたり。あとは、人生の“終わりが見えてくる怖さ”だったり。子どもの頃は人生の可能性が無限に感じられたけれど、今はそれが少しずつ収束していく感じがします。

梨:私は本当にないです! ホラー小説を書いているのに、自分はあまり恐怖心が湧いてこなかった(笑)。

インタビューの最後に、3人それぞれの「怖いもの」を書いてもらった
インタビューの最後に、3人それぞれの「怖いもの」を書いてもらった

━━最後に、「恐怖心展」の見どころを教えてください。

梨:今回の展示は、おそらくこれまでで一番“感想戦が面白い展示”になるんじゃないかと思っています。恐怖心って、過去の体験や記憶の積み重ねから生まれるものなので、何にゾッとするかは本当に人それぞれ。だからこそ「自分はこういうのが怖かったんだ」とか、「え、私は全然怖くなかったよ」とか、友人同士で感覚のズレを楽しめるものになっていると思います。なので、できれば3回分くらいチケットを買って、毎回違う友達と行ってもらえると、より楽しめるんじゃないかと思います!

大森:やはり現代社会って、日常の中でふとした瞬間に“恐怖心”を感じてしまう場面が、すごく多いと思うんです。SNSでも、実生活の中でも。だからこそ、あらかじめ「自分は何に怖さを感じるのか」に気づいておくことって、案外悪くないんじゃないかと思っていて。

たとえば、人によって“テンションが一気に下がる瞬間”って違うじゃないですか。でも、そういう予兆みたいなものを自分で知っているかどうかで、受ける精神的ダメージって変わってくると思うんです。今回の恐怖心展が、そんなふうに“自分を知るきっかけ”になってくれたらいいなと思っています。

※「恐怖心展」は7/18(金)〜8/31(日)、渋谷のBEAMギャラリーにて開催。

文=宮田浩平 取材・編集=田中友梨 撮影=木村辰郎

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