━━今回はどういった展示になるのでしょう。いわゆる「怖いもの」が並んでいるわけではないのですね。
大森:そうですね。平気な人にとっては何でもないけど、苦手な人にはそこに「うっ」とくるものですかね。たとえば健康診断での注射の様子とか。
恐怖心は、特定の対象そのものというより、過去の体験や記憶の積み重ねから生まれてくるものだと思っているので、何に“怖さ”を感じるかは人それぞれで、その感覚は普段は意識されずに埋もれていることもあります。
今回の展示では、展示物に梨さんのストーリーラインが加わることで「あ、本当は自分はこれが苦手だったのかもしれない」と、ふと気づけるような体験になるかもしれません。
━━雪下さんがイラストを手がけたオルタナティブポスターも、誰かの恐怖心を撫でるような感じがします。なぜ台所に3人の女性なのでしょうか。制作背景を教えて下さい。
雪下:団地の台所に女性が3人並んでいるという構図を私が気に入っていて。台所って本来は、料理をしたり、人が集まって団らんしたりする場所じゃないですか。そこにそうした団らんがないと、私には「なんか嫌だな」と感じられるんです。病院や学校などホラーに寄せた場所を背景にする案もありましたが、私は台所のほうが恐怖心を覚えました。
雪下:それから、団地には懐かしさがあります。子どもたちが遊んでいる風景とか、自分の子どもの頃に見た光景がずっと印象に残っていて。そんな団地に女性のみを3人を登場させたのは、その“懐かしい”という感覚と、“典型的な温かい家族”ではない違和感の混ざりを表現するため。
大森さんや梨さんとの打ち合わせのときにも「あれって本当に家族なのか?って確信が持てない感じもまたいいよね」と言っていただきました。家族だったら、子どもがいてもいいし、男の人がいてもいい。そこをあえて“謎”のままにしています。
大森:顔を黒で潰したのは、「恐怖=思考そのものが抜け落ちる」という感覚を視覚化するためです。


