リーダーシップ

2025.07.17 12:00

まず話すな、聴け── リーダーに必要なのは「共感力」 職場の生産性向上を示す研究結果

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「共感(Empathy)」というたった一語が、仕事の満足度、職場でのモチベーション、生産性に与える影響は計り知れない。だが、その重要性を理解するのは容易ではない。最初は、共感がリーダーシップとどのように関係するのか疑問に思うかもしれない。だが今、職場での共感は、グローバル市場において専門技術と同等に重要なリーダーシップの要素として認識されつつある。研究によれば、共感力はリーダーシップや従業員との関係を強化し、結果として職場全体に満足度、革新性、生産性、そして企業の収益性をもたらすという。

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共感を実践する方法

「思いやり」「信頼」「共感」「つながり」「親切心」といったソフトスキルは、未だに「弱さ」や「無能さ」と結びつけられることがある。その結果、ハードスキルよりも価値が劣るものとして軽視されがちである。しかし専門家たちは、ソフトスキルを軽視し、利益を守ろうとするビジネスリーダーは、結果的に自らの成功を妨げていると指摘する。現代の職場で競争力を保つには、ソフトスキルは不可欠である。

なぜか。それは、一時的に他者の視点に立つことで、自分自身の狭い考えや即断的な判断から解放されるからである。共感力は、怒りやフラストレーションといった強い感情を和らげ、対立や困難な状況にも柔らかい姿勢で臨むことを可能にし、他者とのつながりを深めることができる。

これは科学的にも明らかである。共感は即断的な反応を中和する。人は怒りや不満に支配されているとき、他者の立場に立つことが難しくなる。だが視点を切り替えようと努力することで、感情的な反応から客観的な対応へと変化させる力が生まれる。

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ひとつ例を挙げよう。高級レストランで特別な相手と食事をしているとする。キャンドルの灯りに柔らかな音楽、親密な会話。ところが、担当のウェイターは無愛想で苛立っており、態度も悪い。多くの人は苛立ちや怒りを感じるだろう。だが、店長からそのウェイターがシングルマザーであり、数日前に幼い息子を交通事故で亡くしたと告げられたとしたら、どう感じるだろうか。おそらく、共感を覚えるはずである。

何が変わったのか。怒りから共感へと心のスイッチが切り替わり、相手の立場に立って彼女の行動の背景を理解しようとしたのである。ひょっとすると、その共感によってサービスが悪かったにもかかわらず、チップを多めに渡すかもしれない。

職場でも、同様のことが起こる。同僚たちが日々抱えている感情的な重荷は、外からは見えないことが多い。誰もが他人には計り知れない内なる葛藤を抱えている。誰かがミスをしたり、好ましくない態度を示したとき、共感は有効な対応手段となる。たとえ理由が分からなくても、好奇心と共感によって即座の感情的な反応を抑え、より適切でプロフェッショナルな対応ができる。

職場で共感を実践すれば、結果として従業員からの信頼や感謝が返ってくる。生産性の向上にもつながる。共感を通じて関係が良好になれば、職場の多くの課題に対して公正な解決策が生まれやすくなる。自動化が進む現代において、人間性の重みはこれまで以上に重要なのだ。

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翻訳=江津拓哉

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