アジア

2025.07.15 09:00

トランプの「反武士道」的行動に日本震撼 経済と安保「覚醒中」

DannyOliva/Shutterstock.com

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贈り物としてもらった本のなかで、筆者がとくに気に入っている一冊に『Bushido(武士道)』がある。これは日本の伝統的な行動規範について紹介した本だ。筆者がこの本を贈呈されたのは2000年代に入って間もない頃で、当時は日本がこれほど長く停滞することになるとは明らかでなかった。むしろ当時はまだ、日本のゴルフ会員権の価格暴落などが話題にされていた。

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思い返せば、ゴルフ会員権価格の驚くべき上昇は、1990年代半ばくらいまでの日本の顕著な社会経済トレンドのひとつだった。日本が熱狂に沸いていた1980年代、ゴルフ会員権は売買可能な資産になり、「指数」までつくられていたほどだった(こうした指数の登場は常に警戒すべきサインだ)。1982年から89年にかけて日本のゴルフ会員権の平均価格は400%も上昇し、1989年から90年にはさらに190%急騰した。銀座ゴルフサービス(のち「ジージーエス」に社名変更)のような企業は当初、ゴルフ会員権の売買で大儲けし、相場のピーク時には3〜4億円で取引される会員権もあった。

当然のことながらこのバブルは崩壊した。今後の参考にひとつ言っておけば、米コンサルティング会社ゴルフ・プロパーティー・アナリスツ(ゴルフプロップ)のブログ記事によると、米国のゴルフ会員の入会費は2019年以降、年平均23%のペースで上昇している。また、ドナルド・トランプ米大統領の私邸があり、ゴルフ場などを併設するリゾートクラブである「マールアラーゴ」の会員費は、過去1年で43%も値上がりしている。

話を武士道に戻そう。日本で中世以降、武士階級の間に発達したこの気高い倫理規範は、欧州の「騎士道」とは異なる(これに関しては英国の歴史家モーリス・キーンの著書『Chivalry』が必読だ)。欧州の騎士道の概念はもう少し早く登場し、騎士による暴力や騎士同士の殺し合いを抑制することなどが当初の目的だった。武士道はいまもなお多くの日本人の心に生きており、日本は非常に強い社会規範が行動を律する国としてますますユニークな存在になっている。

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翻訳・編集=江戸伸禎

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