マーラータンという料理をご存じだろうか。すでに多くのメディアで紹介されているように、2024年の秋頃から、にわかに人気を集め始めた新しいグルメだ。
もともとは中国の四川発の麻辣(マーラー)スープの煮込み料理だったのだが、このところ都内の有名マーラータン店の前には、若い女性の行列ができているのをよく見かける。
最近では、長野や岡山など、これまでガチ中華のほぼ存在しなかった地方の都市や、首都圏でも私鉄沿線の町にまで出店がみられる。筆者の地元の駅前にも、先月、マーラータンの店がオープンしたときは「ついにここまで来たか」と驚いたものである。
流行前のマーラータンの食レポ
実を言えば、筆者の主宰している「東京ディープチャイナ研究会(TDC)」というガチ中華を愛好するSNSコミュニティでは、マーラータンは以前から多くの人たちによって投稿されるジャンルの1つだった。公式サイトを立ち上げた4年前から、イチ推しメニューとしても取り上げてきた。
TDCのメンバーのなかでも、とりわけ女子学生や社会人の女性ライターなど、若いみなさんが、今日、流行するずいぶん前から、すでにマーラータンの食レポを書いてくれている。
立教大学で観光学を学んでいた江上ふくさんもその1人だ。彼女は2021年春、東京・池袋にある中国のマーラータンチェーン「楊国福麻辣燙(ヤングオフーマーラータン)」の日本でのフランチャイズ1号店を訪ね、TDCのサイトで「具材を選んでカスタマイズ!池袋の『楊国福』で人生初マーラータン!」(2021年6月17日)」というレポートを書いている。
彼女は同店で体験したマーラータンという料理についてこう説明する。
<「楊国福」の特徴は、50種類を超える具材を自分で好きなだけ選べ、オリジナルのマーラータンをつくれること。ショーケースには、小松菜やパクチーなどの野菜、牛や豚などの肉類、エビや海鮮系の練りものなどの具材が並んでいます。麺も具材と同じように何種類も並んでいるのですが、麺なしでスープだけで楽しむこともできます>
先にも述べたとおり、もともとマーラータンは四川火鍋の進化形といえる料理。複数の人間が1つの鍋を囲んでつつくのではなく、「ひとり鍋」のように1人用のお椀に盛られているのが特徴だ。
四川発の麻辣料理が全国化していくなか、個食化が進む都市部の食事情にもマッチしていることから、2000年代に中国全土に広まった。筆者が初めてマーラータンを食べたのは、その頃の北京でのことだった。
2018年12月に日本に初出店した「楊国福麻辣燙」の中国での創業は2003年。フランチャイズ化を始めたのは、2007年からで、日本のみならず、北米やオーストラリアにも展開している中国の大手マーラータンチェーンの1つだ。
現在、中国各地に約6000店舗を展開しているそうで、日本でも都内各地、そして関西や福岡などの都市にも出店を増やしているが、彼女が池袋の1号店を訪れた頃は、まだほとんど日本では話題になっていなかった。
彼女は同店の料理の独特の提供方法についてこう書いている。
<注文の流れは、1)容器とトングを取りショーケースから好きな食材を選ぶ、2)レジでグラム数を量り料金を計算する(100g=400円)、3)スープの辛さ(普通・中辛・大辛)を決める、4)会計を済ませ、席へ移動する>
また肝心の味については次のように綴っている。
<スープは、想像以上にコクがありクリーミー! 初めてのマーラータンでしたが、豊かなスパイスを感じられる濃厚なスープで抵抗なく味わえました。辛さは、3段階の真ん中の「中辛」を選びましたが、辛いもの好きな私にとってはちょうど良い辛さでした。
徐々に花椒が効いてくるため、油断して食べ続けていると後半はかなり舌が痺れます。スパイスの辛さが体を温めてくれ、どこからともなくパワーが湧いてきました!>



