そこでAさんは、知り合いをたどって、2年前までこのIT企業に在籍していた人に話を聞きました。すると、転職エージェントから聞いていた「この企業は女性も子持ち社員も活躍していて、Aさんの今後を考えるとぴったりですよ」という話とはまったく別の反応が返ってきます。
「仕事が生きがいになっている人しか残れない過酷な職場」だと言うのです。
Aさんはずっと違和感はあったそうです。面接官は挨拶もアイスブレイクもなく「なんでうちに入りたいの?」とタメ口で話し、最終面接では社長が30分遅れて面接室に入ってきたにもかかわらず何のお詫びもなく「忙しいので端的に話して」と最初に宣言されました。
「冷静に考えればおかしかったです」
Aさんはそう振り返ります。
でも、仕事柄、考えることが苦手ではないAさんは、どうして考えられなくなっていたのでしょうか?
転職活動は「コース料理」ではなく「自炊」
Aさんもまた、便利すぎる転職エージェントに頼りすぎて、本音と向き合うことを忘れていたのです。
転職エージェントは求人紹介だけでなく、履歴書や職務経歴書の添削、企業や業界の分析、年収交渉まで行うとアピールする会社もあります。それでいて、料金がかかるわけではありません。「慣れているわけでもないから、転職活動は任せてみよう」と考えるのも無理はありません。
転職エージェントは「一流レストラン」のようなものなのです。
予約するだけでテーブルまで出来上がった高級料理を運んできて、後片付けまでしてくれます。しかも無料で。
そうなると、転職活動自体も「コース料理」に思えてしまい、出てきたものを何の疑いもなく食べてしまう。
何度も言うように、もちろん転職エージェントを使うこと自体を否定しているわけではありません。安心して、何でもかんでも任せてしまうことが危ないのです。
転職活動はどこまでいっても「自炊」なのです。


