
社会人3年目から家業の「林業ブログ」を続け、3年間で約140記事を執筆。徐々に林業の真の姿を理解していった。「木を育て、森を育て、森林を保全する林業は、意義のある仕事。もっと報われるべきなのに、収益性や世間の理解度は低く、環境破壊という誤解もまだある。そのイメージを本気で変えたい」と思った芦田は、2022年にあしだへ入社。そこで厳しい現実に直面する。
「うちの会社含め、業界はまだまだ下請けの仕事に頼っている状況。単発の仕事では林業の60年というサイクルのなかで、丸太の価格含め計画的に森林経営する主導権もなかった」
そこでまず、芦田は父と森林経営計画の作成に取り組むことを決意。これは森林の育成から伐採までを計画的に管理するためのもので、森林経営の主導権を自社で握れるようになるためには不可欠だ。間伐計画などを国に提出することで補助金を受けとれるが、手続きの複雑さから京都府内でも取り組んでいる企業はわずかしかない。
同時に、林業の未来を見据え10の新規事業を立ち上げた。薪ストーブ販売や山林不動産といった既存事業を多角化したものから、植林体験に木工教室といった林業の魅力を発信する取り組みまで展開。システム開発会社Eco Forest Friendlyを創業し、林業改革に向けた布石を打った。
そしてまずリリースしたのが、決済アプリ「Eco Pay」だ。消費者が日常の買い物で利用することにより、金額の一部が植林や森林保育事業に寄付される。つまり、植林によるJ-クレジットを間接的に購入できる仕組みだ。森林経営計画に基づいて間伐を行うと、森のなかに光が入って光合成の効率が上がりCO2の吸収量が増加する。これを企業側が国に申請することでJ-クレジットが発行される。
「EcoPayはいわば環境版『PayPay』。QRコードで決済できるEcoPayを日常生活にも広められれば、J-クレジットの流通も促進されて、林業の新たな収益源が創出できると考えた。接点をもちにくい林業と、みんなの日常をつなぐことができたら」


