2. 北極圏に適応したハンター
シロハヤブサの生理機能は、寒くて広々した極北の空間での生活に完璧に適応している。ほかの多くの猛禽類は、いきなりの急降下に頼って攻撃するが、シロハヤブサは彼らとは異なり、ツンドラや氷原における長距離の追跡に長けている。獲物に狙いをつけたら、標的が疲れ果てるまで追い続けることも珍しくない。
力強い翼は、ほかのハヤブサ属に比べると短くて幅が広く、低い高度でパワーと機動性を得られる。降下スピードは、最高時速130マイル(約210km)に達したとの記録もある。そのおかげで、自分の体重の半分近くになるライチョウなど、驚くほど大きな獲物を仕留めることができる。
食物の乏しい地域では、シロハヤブサは獲物を貯蔵することが知られている。仕留めた獲物を雪や岩の下に隠しておき、あとで食べるのだ。
北極圏の食物連鎖の頂点に立つシロハヤブサは、重要な生態学的指標でもある。多くの場合、シロハヤブサの個体群の健全さは、バランスのとれた生態系を反映している。
シロハヤブサは、陸上のハンターと見なされることが多いが、人工衛星による追跡では繁殖期以外の採餌行動が、これまで考えられていたよりもはるかにダイナミックで幅広いものであることが明らかになっている。冬の時期には海上で数週間を過ごし、氷山で休憩をとりながら、氷縁にいる海鳥を獲物にする個体もいる。歴史的にはツンドラ(永久凍土帯/樹木の生えない荒原)や崖に生息するとされてきた鳥にとっては、驚くべき適応だ。
あるメスの若鳥は、陸から遠く離れた外洋で連続40日間を過ごしたと記録されている。そうした知見は、シロハヤブサの捕食者としての多才さを伝えている。彼らは過酷な北極圏の一年を、陸と海両方の生態系に頼って生き延びているのだ。
3. 現代の保全と気候変動
人里離れた場所に生息するシロハヤブサだが、変わりつつある世界の圧力を受けないわけではない。現時点では絶滅の危機に瀕しているわけではないものの、生息地の北極圏は気候変動によって急速に温暖化しており、それがシロハヤブサの狩りの場所や、好む獲物を脅かしている。積雪や植生、獲物(とりわけライチョウ)の個体数変化が食物連鎖を通じて波及し、シロハヤブサの繁殖の成否に影響を与えるおそれもある。
また、人間活動が北へ広がるのに伴い、従来の営巣地である崖や採食地が頻繁にかく乱されつつある。保護活動家たちは現在、人工衛星による追跡、ヘリコプターによる調査、リモートカメラを活用し、シロハヤブサの個体数、移動ルート、繁殖の成否をこれまでになく細かく監視している。そうした取り組みの目的は、この北極圏の頂点捕食者が、この先も北の生態系の一部として繁栄できるようにすることにある。


