6月の12日間にわたるイスラエル・イラン戦争では、前例のない2つの空中戦が並行して繰り広げられた。ひとつは、イスラエルの戦闘機やその長射程弾薬と、イランの大規模ながら時代遅れの防空システムとの戦い。もうひとつは、イランの準中距離弾道ミサイル(MRBM)と、イスラエルの先進的にして戦闘で試されてきた防空システムとの戦いである。
この記事では後者の空中戦について取り上げる。この戦いは主に、イランのイスラム革命防衛隊航空宇宙軍のミサイル部隊と、イスラエル国防軍航空宇宙軍の防空司令部との間で行われた。
イランのミサイル戦力とイスラエルの防空戦力
有人機での長距離攻撃を確実に遂行できるような航空優勢も得られそうになければ、そうした攻撃のための航空機もない軍隊にとって、弾道ミサイルは魅力的な兵器になる。弾道ミサイルは、より低い高度をより低い速度で飛行する巡航ミサイルや自爆型のドローン(無人機)と異なり、戦闘機による迎撃はまず不可能であり、最も先進的な防空システムでなければ撃墜が難しい。
イランは1990年代以来、イスラエルを射程に収めるMRBMの開発に注力し、発射準備時間の短縮や命中精度の改善も図ってきた。イランのMRBM保有数は長年、控えめなものにとどまっていたが、2020年代に急増し、およそ2000~2500発まで積み増したと推定される。イランの代表的なMRBMシリーズには、「エマド」、「ガドル」、「デズフル」、「ホッラムシャフル-4(別名ケイバル・シェカン)」、旧型の「シャハブ-3」(実質的には大型版「スカッド」)、終末誘導段階で機動する能力を持つ最新の「ファタフ-1」および「ファタフ-2」などがある。一部はクラスター弾頭も搭載可能なようだ。
イランはこれらの弾道ミサイルを、「スーマル」やその派生型の「パベフ」といった巡航ミサイルの小規模な備蓄、多数の長距離自爆ドローン、そしてミサイル搭載型の戦闘ドローンで補完している。
一方のイスラエルは、1991年にイラクからスカッドミサイルで攻撃されて以来、米国と共同開発した、ミサイル防衛能力を持つ多層式の統合防空システムに投資してきた。イスラエルは国土が狭いので、重層的な防空層で国全体を密に覆うのが比較的容易だった。



