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2025.07.03 13:00

イスラエルの防空システムはイランの弾道ミサイルをどのくらい防げたのか? 戦績と戦訓

イスラエルの最大都市テルアビブで2025年6月21日、イランから発射された弾道ミサイルをイスラエル空軍の防空システムが迎撃する様子(Eli Basri/SOPA Images/LightRocket via Getty Images)

このほか、回収された残骸から判断する限り、イスラエル防衛ために米海軍の艦艇から高性能なSM-3ミサイルも発射されたようだ。

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イランによる2024年4月の攻撃と同様に、ドローンでの攻撃は直接の効果が乏しかった。イランは今回、計1100機(1日平均90機強)ほどのドローンを発射したとされるが、人口密集地に到達したのはたったの1機だった。残りのドローンは数カ国の空軍の戦闘機や、地上発射型のミサイルで撃墜されるか、電子戦で無力化されるか、あるいはたんに目標に届く前に墜落している。とはいえ、こうしたドローン一斉襲撃はイスラエル側の注意を弾道ミサイルから逸らしたり、高価な迎撃ミサイルの消費を強いたりすることで、イラン側を支援した可能性はある。

停戦後、イスラエル空軍は、飛来したミサイルの90%を撃墜したと主張した。ミサイルの専門家ファビアン・ホフマンは自身のブログで、イスラエルが迎撃したミサイルは420〜475発程度にのぼると推定し、迎撃率は2024年よりも高まったようだと書いている。ホフマンによれば、この向上は「シュート・ルック・シュート(射撃・確認・射撃)」方式の迎撃が可能になっていることが一因と考えられるという。多層防空システムが構築されているため、最初の迎撃が失敗しても、そのデータをもとに、より下層のシステムで再び迎撃を試みることができるというわけだ。

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裏で進んでいたミサイル消耗戦

イランによる6月のミサイル攻撃は、命中率が10%以下だった可能性もある一方で、2024年の攻撃よりも大きな損害と多くの死者をイスラエルにもたらした。死者は28人にのぼり、勤務外の軍人1人を除けば全員民間人だった。イランのミサイルは北西部の港湾都市ハイファの製油所を炎上させたほか、病院、科学研究所、住宅地にも命中した。イスラエルの空軍基地や高位の指揮所の敷地内や周辺にも着弾している。

イラン側がミサイルを軍事目標、経済目標、民間目標にどのように振り分けていたのかは判然としない。実際のところ、イラン製MRBMは総じて命中精度が低く、だいたい目標から数十〜数百メートルずれる。そのため、とくに都市中心部にある治安関係の建物やその近辺で民間人に被害が出た場合、それが故意に民間人を狙った攻撃だったのか否かは判断がつきにくい。

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翻訳・編集=江戸伸禎

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