宇宙

2025.07.06 14:00

太陽系内部に接近中、観測史上最大級の「巨大彗星」に分子ジェットを初検出

太陽系外縁の「彗星の巣」のオールト雲を起源とする、知られている最大級の彗星、ベルナーディネッリ・バーンスティーン彗星(C/2014 UN271)を描いた想像図(NSF/AUI/NSF NRAO/M.Weiss)

太陽系外縁の「彗星の巣」のオールト雲を起源とする、知られている最大級の彗星、ベルナーディネッリ・バーンスティーン彗星(C/2014 UN271)を描いた想像図(NSF/AUI/NSF NRAO/M.Weiss)

観測史上最大級の巨大彗星、ベルナーディネッリ・バーンスティーン彗星(C/2014 UN271)の直径約140kmの彗星核から一酸化炭素(CO)ガスのジェットが噴出しているのを、天文学者チームが発見した。南米チリのアタカマ砂漠にあるアルマ(ALMA)電波望遠鏡(アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計)を用いた今回の観測時点では、彗星は太陽から海王星までの距離の半分以上と、太陽から遠く離れた位置にあった。2031年には太陽系の内側に入ってくるが、地球付近まで太陽に接近することはない。

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重要な事実

NASAのゴダード宇宙飛行センター(GSFC)などの研究チームは強力な電波望遠鏡のALMAを用いて、日心距離(太陽彗星間の距離)が16.6AU(天文単位、1AUは太陽地球間距離)にあるUN271彗星を観測した。

2024年3月に実施されたこの観測では、彗星核から噴出するCOガスのジェットという形で、彗星の分子活動が活発化していることが明らかになった。太陽からこれほど遠く離れたところにある彗星で、COの脱ガス(凍結したガスの放出)が進行しているのが検出されたのは今回が初めてであり、遠方の太陽系天体の研究における大きな節目となる成果だ。

UN271彗星は、大半の既知の彗星の10倍以上の大きさがあり、発見当初は小惑星の仮符号が付けられた。公転周期は約60万年で、次の近日点通過は2031年と見られている。

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国際天文学連合(IAU)の小惑星センター(MPC)の2021年6月19日の発表によると、天文学者のペドロ・ベルナーディネッリとギャリー・バーンスティンが、国際研究プロジェクト「暗黒エネルギーサーベイ(DES)」のアーカイブ画像データを用いてこの彗星を発見した。

UN271彗星で何が起きているか

UN271彗星は、予想外の挙動を示している。彗星の中心部分は、岩石と氷でできた固体の核だ。彗星が太陽に近づくと核が温められ、氷が昇華して輝くコマ(頭部)と尾を形成する。天文学誌The Astrophysical Journal Lettersに掲載された今回の最新観測結果によると、UN271彗星の核から刻々と変化する複雑なCOガスのジェットが噴き出していることが明らかになった。彗星は太陽から非常に遠く離れているにもかかわらず、ジェットは彗星の太陽に面している側に見られた。これは、太陽からこれほど遠く離れた低温環境で彗星活動を引き起こしている要因に関する初の直接的な証拠だ。

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翻訳=河原稔

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