北米

2025.07.01 09:30

米金融当局、暗号資産を「住宅ローン審査」の評価対象として検討開始へ

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米連邦住宅金融局(FHFA)は6月25日、住宅ローン債権の買い取りと証券化を行うファニーメイ(連邦住宅抵当金庫)とフレディマック(連邦住宅貸付抵当公社)に対し、住宅ローンの審査プロセスにおいて、暗号資産を正当な準備資産として評価する方法を検討するように命じた。FHFAのウィリアム・J・パルテ局長のこの命令によって、住宅の購入希望者がローン審査を受ける場合に、暗号資産を現金化せずに信用力の評価に活用できる道が開かれる可能性が浮上した。

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パルテ局長はX(旧ツイッター)の投稿で、「私は、ファニーメイとフレディマックに対し、暗号資産を住宅ローンの借り手の資産として評価する体制を整えるよう指示した」と発表した。

この取り組みは、米国を「世界の暗号資産の中心地」にするというトランプ大統領の方針と一致するものだ。ファニーメイとフレディマックは今後、米国当局の規制対象下にある取引所(適格取引所)で保管中の暗号資産について評価方法を整備し、価格のボラティリティ(価格変動)を考慮した上で、最終案を取締役会とFHFAに提出することになる。

住宅ローン基準が全米で大きく変化

ロイター通信によれば、米国の住宅ローンの半数以上を支えるファニーメイとフレディマックは、単に融資の支援を行うだけでなく、住宅市場全体の基準を策定している。彼らの信用基準が変われば、民間の貸し手もそれに従うことになる。

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2008年の金融危機以降、両社は住宅の供給システムの安定化を目的に連邦の管理下に置かれてきたが、今回、彼らはその仕組みを再定義しようとしている。

税負担なしで暗号資産を住宅購入に活用できるように

この決定により、暗号資産保有者の長年のジレンマが解消されることになる。これまでデジタル資産を住宅ローンの頭金や準備資産に充てたい場合は、いったん売却して現金化し、キャピタルゲイン税を支払う必要があった。一方新たな措置では、条件を満たす暗号資産を保有したままで課税を回避して、住宅ローンの審査に用いることが可能になる。

新たな措置により、初めて住宅を購入する人や低所得層の人々の住宅の購入へのハードルが下がる可能性もある。条件を満たす暗号資産を保有する人々は、税負担を回避できることになるためだ。さらに、暗号資産の保有が、所得が限られた人々の財務状況を補完する材料として評価され、審査の通過を助ける可能性がある。

暗号資産市場全体の65%を占めるビットコインの影響は?

対象となる暗号資産の完全なリストはまだ公表されていないが、ビットコインはここに含まれると予想される。データ集計サイトのCoinMarketCapによると、ビットコインは現在、暗号資産市場全体の65%を占めており、最も信頼できる暗号資産と見なされている。またこの高い市場占有率は、金融機関などの貸し手が現金や米国債のようにビットコインを扱い始める可能性を示唆している。

若年層や多様な人々による住宅購入のハードルを下げる可能性

暗号資産を住宅ローン審査に活用可能にすることは、特に若年層や多様な人々の住宅購入を後押しすることにつながる可能性があるという。2023年にノースウェスタン大学ローレビューに掲載された論文では、若年層はデジタル資産を保有している傾向が強いとされている。現行の制度では、住宅ローンの頭金や予備的な資金の確保のために、暗号資産の売却と税の支払いを求められる。これによって、高いパフォーマンスを示している最中に、その資産の持ち分を減らさざるをえないというケースが発生している。

ファニーメイの調査によれば、住宅ローンの頭金は黒人やラテン系の借り手にとって大きな障壁となっており、FHFAの命令はそのような格差の解消にも役立つ可能性がある。

暗号資産のボラティリティが懸念点として挙げられるが、例えばビットコイン価格のボラティリティは、資産としての成熟や時価総額の上昇につれて減少傾向にある。

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編集=上田裕資

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