ウクライナのボロディミル・ゼレンスキー大統領は6月25日、欧州評議会との間で、「ウクライナに対する侵略罪に関する特別法廷」を設立するための協定に署名した。この協定の締結は、ロシアが2022年に始めたウクライナ全面侵攻について、ロシア指導部の責任を追及するための大きな一歩だ。
フランスのストラスブールに本部を置き、46カ国が加盟する欧州評議会は、人権、民主主義、法の支配の擁護を目的とする国際機関である。その議会部門である欧州評議会議員会議(PACE)で演説を行ったゼレンスキーは、PACEに謝意を表するとともに正義の重要性を強調した。
「このような特別法廷の設立が初めて呼びかけられたのも、まさにこの会議においてでした。このアイデアはここで生まれ、いまでは欧州内外のパートナー諸国から実際に支持を得ています。プーチン(ロシア大統領)をはじめ、ロシアのすべての戦争犯罪者に必ず裁きを受けさせるため、政治的にも法的にも強力な協力が必要です。私たちはその道を進まなくてはなりません。実際に訴追がなされ、判決が下されるまで、歩み続けなくてはいけません」(ゼレンスキー)
ゼレンスキーはさらにこう続けた。「侵略者は敗北しなければならない。私たちはそれに取り組んでいます。しかし正義もまた重要です。欧州であろうとほかのどこであろうと、戦争犯罪者には隠れ場がないように、正義が機能しなくてはなりません。侵略には何の報酬もないという法的原則を確立するかたちでです」
Today, together with the Secretary General of the Council of Europe, @alain_berset, we signed the Agreement on the Establishment of the Special Tribunal for the Crime of Aggression against Ukraine.
— Volodymyr Zelenskyy / Володимир Зеленський (@ZelenskyyUa) June 25, 2025
Today’s Agreement and this Tribunal give us a real chance to ensure justice for… pic.twitter.com/tkH3cVHNMY
PACEのセオドロス・ルソプーロス議長は次のように述べた。「1200日以上にわたり、ウクライナの人々は私がかつて『千の悪夢』と呼んだ日々を生きてこられました。そのなかでも最も危険な悪夢は、世界がこの戦争に慣れてしまうことであり、主権国家への全面侵攻が常態化することであり、そして戦争犯罪が見過ごされることであります。けれどもこの会議、この評議会は、まさにこうした道徳的退廃に立ち向かうために創設されたのです」
設立される特別法廷は、「侵略罪(crime of aggression)」、すなわち国連憲章に違反して他国に武力を行使する決定をした罪で政府高官を訴追する権限を持つ。「コアグループ」と呼ばれる約40カ国の法律専門家たちがウクライナ当局や欧州評議会、欧州連合(EU)と協力して、設立に必要な3つの法的文書を起草した。



