人工知能(AI)は、医療とヘルスケアの分野で確実に革命をもたらしつつある。この分野では、数億ドル単位の巨額の資金調達で注目を集める企業が増えている。認知度は高くないものの、医療提供者にとって最大の課題のひとつである、手作業によるプロセスや膨大な量の事務処理を解決しようとしているAIスタートアップの一群が存在する。
医療業務は膨大なリソースを消費するが、この分野のイノベーションはそれほど注目されていない。こうした取り組みの中には、予約プロセスに焦点を当てているケースがある。例えば、英国のSPRYTは国民保健サービス(NHS)と提携し、AIと通信アプリのワッツアップを使ってがん検診の予約と再スケジューリングを自動化した。
米国のAugmedixは、音声技術を使って医師と患者の会話を記録し、構造化された医療メモに変換している。同じく米国を拠点とするSukiも臨床医の事務作業をサポートする様々な音声ツールを提供している。
そんな中、ミラノを拠点とするReportAId(リポートエイド)が5月6日、初の資金調達を発表した。昨年設立された同社は、イタリアで複数の病院やヘルスケアプロバイダーと提携を結んでおり、今回のシード資金の220万ドル(約3億1600万円)を用いて欧州全土に事業を拡大しようとしている。
「私はこれまで様々な医療業務に携わってきたが、医師が書いた診療記録や所見を価値あるデータに変換するテクノロジーがあれば、大きな変革をもたらすことができると常に感じていた」と、ReportAIdの最高経営責任者(CEO)であるジュゼッペ・ファラーチは語る。
「医師が作成する患者の報告書は、膨大な量の非構造化データであり、紹介や処方などのプロセスを自動化することを困難にしている」と彼は指摘する。
ReportAIdのAIツールは、医療専門家が記した報告書を解析し、次のステップとして推奨されるアクションを特定し、それをもとに自動でワークフローを実行する。このツールは次回の診察の自動予約や、より高度な治療のための紹介手続きを自動で始めるといった使い方が可能だという。



