日本の宇宙ベンチャーであるispaceは6月6日、月着陸船「レジリエンス」による同社2度目の月面着陸に挑戦した。しかし、着陸直前に機体の降下速度が落ちず、あえなく失敗。同社による初の月面着陸は、2027年予定のミッション3に持ち越されることになった。
6月24日には「技術要因分析の報告会」が開催され、着陸失敗の要因が「レーザーレンジファインダー」(LRF)と呼ばれる高度計測機器にあったことが報告された。今後はその検証をさらに進めるとともに、後続ミッションにその経験を活かすという。
袴田CEOに対するこのインタビューは、その報告会より以前に行われたもの。着陸失敗の要因解析が進むなか、ミッション2の成果と後続ミッションの進捗を聞いた。
ミッション2を振り返る
──6月24日にはミッション2(以下、「M2」)の結果報告会を開くとのことですが、かなり早いですね?
みなさまに少しでも早く報告できればと思い、早期に報告の場を設けました。宇宙の場合は現地調査をするわけではなく、主にテレメトリーの解析によるので、その意味では解析しやすい面もあります。その限られたデータからわかることは多く、原因は特定できると考えています
──NASAの月探査機LRO(ルナー・リコネサンス・オービター)を使って、墜落ポイントを撮影する予定は?
NASA次第だと思います。ミッション1のときも私たちが依頼したわけではありませんが、NASAによってLROによる画像が公開されました。M2でもあり得ると思います。
(編注:このインタビューのあとの6月20日、レジリエンスの墜落地点の画像がNASAによって公開された。左は墜落以前、右は6月11日にLROによって撮影された画像。 赤い矢印が指すドットは、月面に衝突したレジリエンスがレゴリス(月の砂)を巻き上げて形成されたもの。その周辺のレゴリスも削り取られた結果、明るい「ハロー」として観測できる)
──高度100kmの月周回軌道(円軌道)から離脱するまで(サクセス8)は、非常にスムーズに進んだように思えますが、その間、特別な対処が必要な事態は?
テレビ番組(毎日放送『情熱大陸』)でも紹介されたように、打ち上げから2カ月後に低エネルギー軌道上、つまり地球からの遠地点(約100万km)のポイントで、レジリエンスにコマンドが送信できないという事態になりましたが、再起動によって最悪の事態を回避することができました。それ以外は機材、プログラム、航法など、すべてにおいて非常にスムーズでした。それはミッション1で培った経験から得られた結果だと考えています。当然、宇宙のことですから他にもさまざまな事象がオペレーション上で発生しましたが、それぞれの局面でしっかり対処でき、今後に課題が残るようなことはありませんでした。



