レッドワイヤとの提携
──ドレイパーと同じように米レッドワイヤ社(フロリダ州)とも組んで、NASAのCLPSに採択されることを目指すと2025年4月に発表されました。どのミッションで提携することになりそうですか?
時期は未定ですが、CLPSの入札は年2回程度あります。可能性としては、米国製の機体であるAPEX 1.0によるミッション、つまりM5(2028年予定)とM7(2029年予定)が該当します。
レッドワイヤは、ISS(国際宇宙ステーション)の太陽光パネルなどを製造していて、NASAからの信頼も厚い企業です。また、彼らを支えるプライベート・イクイティ(非公開企業に投資するファンド)が、太陽電池パネルやセンサなど、宇宙機に関わるさまざまなコンポーネントをこの企業に集積しようとしているなど、非常にユニークな企業といえます。彼らとタッグを組むことは、今後のispaceの事業に大きな可能性をもたらすと考えています。
──ドレイパーと同様、レッドワイヤに対してもispaceから声をかけましたか?
レッドワイヤとは昔から取引があり、私自身も同社の経営陣とは旧知の仲で、その縁といえます。その一人がNASAの上級管理職に就いていた方で、アメリカの宇宙資源に関する法整備にも関わり、私たちの事業にも関心を持ってくれ、以前から議論をしてきたという経緯があります。
月の水
──2025年に入ってから、「月の水資源」に関するリリースが数多く出ています。宇宙戦略基金の「月面の水資源探査技術」への採択、栗田工業の「月面水処理実証試験装置」の輸送に関する締結、高砂熱学工業との「月面におけるサーマルマイニング技術」に関する締結のほか、ispace欧州法人がESA(欧州宇宙機関)と極域氷探査ミッション「MAGPIE」で締結しています。これらは御社のビジネスにおいて、次のステップを示していますか?
私たちが将来のビジョンとして「Expand our planet. Expand our future(人類の生活圏を宇宙に広げ、持続性のある世界を目指す)」を掲げているように、人類が宇宙に生活圏を築いていくためには経済圏が必要だと考えていて、その経済を回す最初のドライバーとして「月の水」に注目しています。
ただ、月の水の存在は確認されていますが、その所在と量を突きとめる探査は今後の課題といえます。それを実現するにはみなさんとの協力が必要です。同時に、水から得られる水素エネルギーなどのバリューチェーンをいかに構築していくかが、今後の事業のひとつの軸になると考えています。


