大手企業が相次いで新卒初任給の引き上げを発表する中、実際の学生はどのような期待を抱いているのだろうか。三菱UFJ銀行が初任給を月額4万5000円引き上げ30万円とするなど、人材獲得競争の激化を背景に初任給アップのニュースがたびたび報じられている。
そうした中、就職活動が本格化する新卒学生が抱く初任給への期待と実際に内定を得た企業の条件との間に、ギャップが存在することが明らかになった。
新卒大学生向けの就活情報サイト「就活の教科書」を運営する株式会社Synergy Careerが2026年卒の大学生196人を対象に実施した調査によると、学生が理想とする初任給の平均は29.6万円だった一方で、実際の就職予定先企業では「21~25万円」が最も多く、理想と現実の間にはかなりの差が生じていることがわかった。
理想の初任給は「26~30万円」が最多
調査では、学生が理想とする初任給について「26~30万円」と答えた人が37%で最多となった。次いで「21~25万円」が24%、「31~35万円」が20%と続いた。平均すると29.6万円という結果になり、多くの学生が20万円台後半から30万円程度の初任給を期待していることがわかった。
一方、実際に就職が決まった企業や就職予定の企業の初任給については、「21~25万円」が30%で最も多かった。この水準は厚生労働省が発表した2024年の大卒初任給平均(約23万円)とほぼ一致しており、多くの学生が標準的な条件の企業に就職していることを示している。理想と現実の間には、金額帯にして1ランクの差が生じている格好だ。
3万円の差で志望度が約4割上昇
興味深いのは、初任給が志望度に与える影響の大きさだ。「企業への志望度が上がる初任給の引き上げ額」を尋ねたところ、「3万円」と答えた学生が最も多く、38%に達した。月額3万円、年収36万円のアップが、企業選択において一定の影響力を持つことを示している。
この結果は、物価上昇や将来への経済的不安が高まる中で、学生が現実的な収入面への関心を強めていることを示している可能性がある。ただし、金額としては決して高額ではなく、学生が求めているのは「法外な高収入」ではなく、日常生活に少し余裕を持てる程度の現実的な処遇改善といえそうだ。



