「5万円高い企業」からのスカウトで7割が心揺れる
「初任給が5万円高い企業からスカウトされたら就活を再開するか」という質問では、学生の複雑な心境が浮き彫りになった。最も多かったのは「どちらとも言えない」(43%)という回答で、明確な判断を避ける傾向が顕著に表れた。
「おそらく再開する」(24%)と「絶対に再開する」(6%)を合わせると30%が再開に前向きで、「どちらとも言えない」43%を加えると、約7割の学生が再開の可能性を完全には否定していないことがわかった。一方で「おそらく再開しない」(17%)「絶対に再開しない」(9%)と明確に断る学生は26%にとどまった。
この結果は、月額5万円という金額が学生にとって決して無視できない魅力を持っていることを示している。ただし、即座に判断を下すのではなく、既に内定を得た企業との関係性や将来性なども含めて慎重に検討する姿勢もうかがえる。
高初任給に警戒感「その先はどうなる?」
初任給が高い企業に対するイメージを尋ねた質問では、意外にも警戒的な回答が目立った。
最多の31%が「長期的な昇給が気になる」と回答し、初年度だけでなく将来的なキャリアパスへの関心を示した。また「求められるレベルが高そう」(30%)、「激務である可能性がある(26%)といった懸念も上位に挙がり、高給与と引き換えに過酷な労働環境を想像する学生が少なくないことがわかった。
この傾向は、学生が企業選択において表面的な条件だけでなく、長期的な働きやすさや持続可能性を重視していることを物語っている。学生からは「ベテラン社員の給料が上がらないのが怖い」「初任給を引き上げているような企業の真意を疑う」といった率直な声も聞かれ、ブラック企業問題が社会的に注目される中、高い初任給を「危険信号」として受け取る感覚も芽生えているようだ。
企業側にとっては、初任給の引き上げだけでなく、働く環境の質についても丁寧に説明することが求められそうだ。
求められるのは「働き方の質」
初任給以外で重視する制度について聞くと、「有給休暇取得率」(31%)がトップとなった。続いて「転勤がない」と「フレックスタイム制」が同数で27%の2位につけた。金銭面だけでなく、働きやすさや時間の融通、勤務地の安定性といった「働き方の質」への関心の高さが表れている。
有給取得率を最も重視する傾向は、プライベートの時間を確保し、仕事とのバランスを取りたいという強い意向を示している。また、転勤への懸念やフレックスタイム制への関心からは、自分のペースで働きたいという価値観がうかがえる。企業が優秀な人材を獲得するためには、初任給の引き上げと並行して、これらの制度面での充実も重要な要素となっているといえそうだ。
今回の調査結果は、企業の採用戦略に重要な示唆を与えている。学生が理想とする初任給と現実との間にはギャップがあるものの、単純な金額の引き上げだけでは優秀な人材の獲得は難しい時代になったことが明らかだ。現代の学生は、目先の処遇だけでなく持続可能な働き方を重視する現実的な価値観を持っているといえそうだ。
【調査概要】
調査期間:2025年6月12日〜6月25日
調査対象:26卒で就活中・就活を終えた大学生
有効回答数:196人(男性71人、女性125人)
調査方法:インターネット調査
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