食&酒

2025.06.21 10:30

2025年版 世界のベストレストラン50、ペルーのニッケイ料理が1位に

「世界のベストレストラン50」の授賞式が6月19日(現地時間)、イタリア・トリノのコンベンションセンター「リンゴット・フィエラ」で行われた。イタリアの自動車産業のさきがけでもあるフィアット社の元工場を、イタリアを代表する建築家、レンゾ・ピアノが改築したもので、シェフやメディアなど約1200人が集まった。

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今回世界No.1に輝いたのは、ペルー・リマの「マイド」。シェフの津村光晴氏は日系2世で、ペルーと日本の料理が融合した「ニッケイ料理」を提供している。津村氏は「1899年からペルーへの移民が始まりましたが、ペルーでは日本人のコミュニティと地元のコミュニティの関係がとても近く、醤油や味噌がペルー人の食卓に当たり前に登場するなど、食が混ざり合ってきました」と語る。

それは例えば、ペルー料理の代表である、生魚をライムジュースと黄色唐辛子のマリネ液に漬けてつくるセビーチェにもあらわれている。「日本人がやってきてからは、角切りにしていた魚を刺身のように薄く切ったり、マリネする時間を短くして、より生の魚のフレッシュさを楽しむように変化しています」という。

まるでクラシック音楽のような優しい味わいの日本料理と、ハードロックのように味のボリューム感があるペルー料理のバランスを取りながら、洗練されたプレゼンテーションのテイスティングコースで美食体験を提供したことが評価された。

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イタリアの食文化を感じながら

「その土地らしさ」を表現する店が上位にランクインすることが多い世界のベストレストラン50だが、アワード開催地の自治体も、趣向を凝らした「おもてなし」でその土地の魅力を表現する。

会場となったトリノは、イタリア第二の工業都市であるが、1861年のイタリア統一の際には首都となった歴史をもつ。さらに遡ると、16世紀にフランスを含む一帯を治めていたサヴォイア家が首都と定めていた。街にはクラッシックでエレガントな建物が今も残り、授賞式に先立って行われたメディア向けのウェルカムディナーは、世界遺産でもあるサヴォイア家の王宮群の一つ、夏の離宮「ヴェナリア宮殿」で開催された。

ピエモンテのアルベルト・チュリオ州知事は、「ここで、イタリアの起源であるピエモンテの歴史を感じていただきたい。ワインやチーズ、サラミ、白トリュフ、チョコレート、ジャンドゥーヤなど、私はこの土地の美食の豊かな伝統と文化に誇りを持っています」とコメント。これらの食材に加え、サマートリュフや仔牛肉のタルタルなどの料理が振る舞われた。

またピエモンテは、地域の伝統的な食文化や食材を大切にし、持続可能な食生活を目指す「スローフード」運動が始まった場所としても知られる。チュリオ氏は「食は文化であると同時に、環境や人に対する尊敬でもあるということを伝えたい」と語った。

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文=仲山 今日子

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