食&酒

2025.06.21 10:30

2025年版 世界のベストレストラン50、ペルーのニッケイ料理が1位に

その言葉通り、今回のアワードは、環境や人に敬意を払い、多様性を包み込む食の豊かさを、遺憾無く表現したものということができるだろう。

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食の世界に輝かしい貢献をした人物に贈られる「アイコン・アワード」には、イタリア「オステリア・フランチェスカーナ」のマッシモ・ボットゥーラ氏と妻のララ・ギルモア氏が選ばれた。

ボットゥーラ氏は、路上生活者のための無料レストラン「レフェットリオ」を世界各国に展開するほか、独居のお年寄りと障がいを持つ子どもが一緒に小さなパスタ「トルテッリーニ」をつくる「トルテランテ」など、社会問題を食の力で解決するアプローチで知られる。

「世界のベスト女性シェフ」に選ばれたのは、タイの「ポトン」のピチャヤ・"パム"・スントゥルニャキージ氏。この賞は、ファインダイニング厨房ではまだ少数の女性のシェフにスポットライトを当て、若い世代に未来の可能性を感じてもらうという目的がある。

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受賞の際に会場で流された映像には、シェフとしてはもちろん、幼い娘を持つ母としてのパム氏の日常がクローズアップされ、結婚や出産を経ても世界のトップで輝くことができる、というメッセージが感じられた。また「ポトン」は初ランクイン店としては最高位の世界13位として「ハイエスト・クライマー賞」を受賞した。

会場で上映された動画の一部 (C)World’s 50 Best
会場で上映された動画の一部 (C)World’s 50 Best

飲食業界に革新を起こす「チャンピオン・オブ・チェンジ」には、オーストラリアの先住民族の血をひき、彼らの間で伝統的に使われてきた原種の穀物や胡椒の一種などを生かして料理をつくるミンディ・ウッズ氏に贈られた。歴史的に差別的な待遇を受けてきた先住民族の文化の豊かさを見つめ直す活動に対する賞賛ということができるだろう。

今回世界一に輝いた「マイド」が表現するニッケイ料理は、二つの異なる文化が手を取り合って生まれた新しい料理だ。ランキングは、世界のシェフやジャーナリストなど1120人の業界関係者の投票によって選ばれるものだが、異なる文化が反発し、紛争が頻発するいま、民族や文化の融和、融合から生まれた料理が世界一となり発信されるメッセージは深い。

この点を津村氏に尋ねると、「日本とペルーは2万kmも離れていますが、異なる文化の出会いが、素晴らしいニッケイ料理を生み出しました。世界において食はとても重要な役割を果たしています。何か問題が起きた時に、テーブルについて解決策を議論します。一方、人生における幸せな瞬間もテーブルで起きています。食は対話と幸せの象徴なのです」と返ってきた。

現代の食のシーンにおいて、社会にメッセージを発する、地域社会と共同して問題を解決する、文化を守るといったことは、もはやファインダイニングの食体験の一部になっている。美食家たちは、そんなストーリのある食を味わいにくる。日本人の両親のもと、ペルーで生まれ育った津村氏が生み出すニッケイ料理「マイド」は二つの異なる文化の融和を呼びかける、一つの象徴のようにも見えた。

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文=仲山 今日子

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