国内

2025.07.30 07:45

日本のアパレル国産比率が1.4%に落ち込んだ今、僕らがするべきこと

名古屋市内にあるジャージ縫製工場

サプライチェーンは使う人まで

服の生産業界には、川上、川中、川下という構造があります。川上は素材や生産者、川中は問屋や卸業者、川下は百貨店や小売業者というように分類されて、それぞれが機能と役割を持って協業をしてきました。今、この川上の衰退、つまり源泉であるものづくりがなくなることは、川中、川下にとっても、どこにでも同じ、人間性のないものしか店頭に並ばないという状況を意味します。

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ただ、川上の生産者が独自でブランディングをできるか、製品を作り出して発信できるかというと、僕らのようにブランドを作ったケースもありますが、それは全ての工場ができることでもありません。特に高齢の生産者の方々はずっとものづくりを続けてきたので、発信する方法を知らない。川上は作ることだけに専念をしてきたので、川下のノウハウを持っていないのです。

suzusan
suzusanのデュッセルドルフの店舗

そこで「1.4%」の数字をどうするかと考えると、より川中、川下の人たちがそこを価値として丁寧に扱う必要があると感じます。それは生産者と話をしてそのストーリーを店頭で伝えること、あるいは増え続けるインバウンドの需要は「日本の地域性のあるものづくり」に熱い需要、ポテンシャルがあることを認識することにあるでしょう。

また、製品を使う立場の一般消費者、使い手としてもできることはたくさんあります。買う時に少しだけ製品タグを気にしてみる。日本製の服を買う。作られたもののストーリーを調べてみる。最近では工場や産地でのイベントも増えているので、そういう機会にものづくりの産地に足を伸ばしてみるのもいいと思います。大切に作られたものを大切に長く使うことが、川上への大きな貢献になります。

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SNSの普及により個人の発信の影響力が強くなり、“共感”は最も大きなマーケットツールになってきています。その意味では、川上・川中・川下構造だった業界は、その先のエンドユーザーがいる海までが、大きな一つのサプライチェーンとなりました。モノが下流に流れていくだけではなく、鮭が産卵のために海から川を昇るように、作り手、伝え手そして使い手の様々な関わり方がこれからの豊かな社会を形成していくことになると思います。

おそらく今日も日本のどこかで長い歴史を持った素晴らしい工場が廃業をしています。そしてそこには、父と10代の僕が体験したような苦しい生活を背負った家族がいることだと思います。

そのような状況を少しでもなくすためには、人口減少が続き、量の優位性がより低くなるこれからの日本で、人間性や共感の優位性を改めて見直し、最大限に活かすことが重要ではないでしょうか。

文・写真=村瀬弘行

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