目標を設定したとき、現実的に考えることを忘れ、空想にふけってしまうことはないだろうか。「理想の未来」を夢見ること自体が悪いわけではない。むしろ、刺激やモチベーションにつながることさえある。しかし、努力をせずに成功を夢見るだけでは、目標を実現するチャンスをかえって損なうかもしれない。
目標を積極的に視覚化するツールとして、多くの人が活用し始めているのがビジョンボードだ。ソーシャルメディアには、怠惰を克服し、生産性を高め、「完璧」なビジョンボードを作成する方法に関するアドバイスが溢れている。
ビジョンボードとは何か
ビジョンボードとは、年間の目標を視覚的に思い出させるような写真や引用、言葉を集め、ボード上にまとめたものだ。目標を書き出すことで、目標が達成される可能性が高まるのと同様に、目標を視覚的に表現する方法も、役に立つ可能性がある。よく目につくところにビジョンボードを掲げることで、自分の目標が思い出され、達成するための行動を起こすモチベーションが得られるだろう。
しかし、ビジョンボードが本当に効果的かについては、疑問視する声もある。問題が起こるのは、最終的な成功を想像するだけにとどまり、そこまでの過程にあるステップや障壁を無視する場合だ。最終的なゴールにのみ目を向け、そこへ到達するために何が必要かを考えずにいると、フラストレーションがたまるばかりで進歩がない状態に陥りかねない。
ニューヨーク大学の心理学アソシエイトプロフェッサーであるエミリー・バルセティス博士は、『The Huberman Lab Podcast(ヒューバーマン・ラボ・ポッドキャスト)』で、こう説明した。「そのような経験をする人、すなわち、あれやこれを成し遂げた際の素晴らしい人生を想像する人は、血圧を測定してみると数値が低下している。しかしモチベーションの研究では、血圧の上昇こそ、我々の体が行動に移る準備ができていることを示す指標であることがわかっている」
「ビジョンボードを作成することは、かえって逆効果になる可能性がある。なぜなら作成すること自体が、目標を設定して達成した、という満足感を生み出すからだ。そして人々は当然ながら、そのポジティブな経験を楽しむ時間を持とうとする。言ってみれば、自分が達成したことに甘んじてしまうのだ」と同氏は付け加えている。
目標をリストにまとめたり、ビジョンボードを作成したりする行動は、自信や喜び、方向性をもたらしてくれる。しかしそこから行動に移さなければ、目標の達成にはつながらない。
目標設定をより効果的にするため、補完的なアプローチとして、後述の「心的対比(メンタル・コントラスティング)」を活用することを検討しよう。



