ライフスタイル

2025.06.18 15:15

備蓄米が連日話題の日本を横目に、ハワイで「日本米」ブームが続く理由

高級日本米の代名詞としてハワイでも定着した山形県産の「つや姫」。現地でのPRに力を入れていて、写真のように1合分のシート米を「おまけ」に付けて特売することも

高級日本米の代名詞としてハワイでも定着した山形県産の「つや姫」。現地でのPRに力を入れていて、写真のように1合分のシート米を「おまけ」に付けて特売することも

日本のテレビで小泉進次郎農水相の顔を見ない日はないのではなかろうか。米不足のなか、農水省との随意契約で調達した政府備蓄米の販売が連日報道されているようだ。ところがこのニュース、米国在住の日本人からすると、やや不思議な感覚で受け止められている。なぜなら、ハワイのスーパーでは、日本産米が豊富に販売されているからだ。

advertisement

キャスターの辛坊治郎氏が、Xでこんな投稿をして話題になった。<ワイキキ ドンキ なう。米国産米が日本よりはるかに安いのは当然だが、写真をよく見てほしい。日本産100パーセントの米が5キロで2900円>と、現地のスーパー「ドン・キホーテ」に日本産米「コシヒカリ」5キロが19.99ドルで販売されている写真をアップ。<アメリカの人件費が日本の倍以上であることを考えると、日本では、流通段階のどこかで誰かが大儲けしているとしか思えない>とコメントした。

日本産のお米がたっぷりと並ぶ、ホノルルの小売店の様子(「ドン・キホーテ」ホノルル店)
日本産のお米がたっぷりと並ぶ、ホノルルの小売店の様子(「ドン・キホーテ」ホノルル店)

実はハワイでは、最近、日本産米が豊富に販売されている。2024年には農業機械で有名な「クボタ」がハワイに精米工場「 Kubota Rice Industry (Hawaii) Inc. 」を設立。ホノルルで日本産米の大規模な精米・販売事業を始めた。

クボタグループの日本産米輸出事業は年々拡大し、2024年には9641トンを海外に輸出し、過去最高数量を記録。右肩上がりで伸びている。2024年の日本産米の輸出総量が4万5112トンだからクボタのシェアは刮目に値する。

advertisement

ハワイの日系スーパーに行けば、魚沼産や新潟産の「コシヒカリ」、北海道産の「ななつぼし」や「ゆめぴりか」、山形県産の「つや姫」や「はえぬき」などのブランド米が所狭しと並んでいる。日本産米を扱う卸会社も増えていて、クボタのハワイ進出はこの日本産米ブームをさらにあおった形だ。

「高くてまずい」日本産米が劇的に変化

筆者がハワイに住み始めた2009年は、まだ日本産米はほとんど見かけなかった。あっても、日本の品種をカリフォルニアで栽培したコシヒカリがせいぜい。その中でも「田牧米」が人気のブランド米で、お米にこだわる日本食レストランなどでは田牧米の使用をわざわざアピールしていた。我々のようなハワイ在住の日本人が家庭で使うお米も田牧米が唯一の「高級」品種だった。

それが変化したのが、2016年。日本産米を玄米で日本から輸入してハワイで精米する「ライスファクトリー」社がハワイに上陸。各種ブランド米の販売を始めた。時を同じくして、ハワイの製麺会社として長い歴史を持つ「サンヌードル」社が山形県産の最高級米「つや姫」の精米をスタート。同社の夘木栄人社長は、山形県で味わったつや姫のおむすびの味に感動し、「冷めても美味しい」つや姫をハワイの人々にも味わってほしいと精米機の導入を決意したそうだ。

日本産のブランド米「つや姫」使用をアピールするおにぎり店もハワイに登場している
日本産のブランド米「つや姫」使用をアピールするおむすび店もハワイに登場している

かつて輸出用の日本産米は「高いのに美味しくない」と言われた。というのも、日本国内で精米された後に輸出されることが多く、水分量の多い日本産米は、精米後は急速に酸化、劣化が進行する。日本国内では「納品は精米日から3日以内」と規定している大手スーパーもあるそうだ。以前のハワイではスーパーで日本産米を見かけても、精米日が1年前などという商品も珍しくなかった。

ところが、精米機を導入する日本産米の卸会社が進出しはじめた2016年頃からハワイの日本産米の環境は劇的に変化した。和食レストランや寿司店で「日本産米使用」「つや姫使用」などと謳う店が増えはじめ、「今日精米」「昨日精米」ということを売りにした、日本でもあまりお目にかかれない、まさに精米仕立ての日本産米が買えるようになった。ちょうど、日本酒や焼酎がアメリカの若者たちの間でブームになり始めた頃だ。日本米の高級品種は、それら同様に米国人にとってもブランドになっていった。

次ページ > ハワイ進出10年「つや姫」の功罪

文・写真=岩瀬英介

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事