欧州

2025.06.15 13:00

独裁判所「刑務所内での大麻OK」判決──なぜそんなことに?

Shutterstock.com

Shutterstock.com

ドイツ、ベルリンの裁判所は、刑務所の居室が大麻法(Cannabisgesetz、CanG)における「常居所(長期にわたって居住している場所)」に該当するとして、受刑者が居室内で大麻を所持していても、50g以下なら刑事犯罪や行政違反には当たらないとの判決を下した。

advertisement

この裁判は、2年3カ月の実刑判決を受けて服役中の被告が、居室内で45.06gの大麻樹脂(いわゆる「ハシッシュ」)を個人使用の目的で所持していたことをめぐるものだ。

裁判所は、「刑務所は大麻法の適用外」とする検察側の主張を退け、大麻法および立法過程においてもその根拠は見当たらないとした。

ドイツは昨年、大麻を合法化

ドイツでは昨年、嗜好用大麻の個人使用が合法化され、マルタ、ルクセンブルクに続き、ヨーロッパで3番目の合法国となった。現在、住居などの「常居所」内に成人 1人あたり25gまで、乾燥大麻なら50gまでの所有が認められている。

advertisement

大麻の使用が禁止されているのは軍事区域、学校、公園などの遊び場、青少年施設だが、刑務所に関する制限は明記されていない。よって裁判所はその「意図」を考慮し、受刑者が長期にわたって拘留されている居室も「常居所」の概念が適用されるとした。

同時に、各刑務所は秩序や安全の維持を目的とした内部規則に基づいて受刑者の大麻使用を制限できるとも言及。このことから、内部規則に違反した受刑者はたとえ法律上は問題ないとしても、刑務所内で処罰を受ける可能性がある。

受刑者にも認められた大麻所持の権利

今回の判例は、個人使用を目的とした大麻の所持を刑務所内でも認めるという珍しいものとなった。ドイツの大麻法における「常居所」とは一時的な滞在先ではなく、継続的に居住している場所と定義されており、通常は少なくとも6カ月以上継続して滞在していることが条件とされる(途中の短期間の不在は許容される)。

今回の受刑者は6カ月以上にわたり居室で生活し、面会者と会い、日常生活を営んでいたことから、裁判所はこの居室が「生活の中心(=常居所)」であると判断。大麻法における「常居所」の法的定義を満たすと結論づけた。

ドイツ政府は当初、営利目的の販売を含む大麻の全面合法化も計画していたが、EU法(欧州連合加盟国に適用される共通の法律)に抵触する懸念があるとして断念。現在は大麻販売が公衆衛生に与える影響を検証するため、特定の都市での販売を認める試験的プログラムの実施が検討されている。

ドイツではまた、カンナビス・ソーシャル・クラブと呼ばれる非営利の大麻栽培・分配グループの設立が認められている。会員になれるのは成人のみで、1クラブあたりの上限は500人。会員に分配される大麻の量は1日最大25g、1カ月で最大50gだ。営利目的の大規模栽培を防ぐため、クラブでの大麻栽培は会員数に応じて制限される。これらの組織を統括する団体によると、現在ドイツには106のクラブがあるという。

forbes.com 原文

翻訳=猪股るー

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事